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金子善明さん、個展では2回目のご登場です。
展覧会紹介ページはこちらからご覧ください。

「個展を3回ぐらいできる作品が並んでいるんですよ」と金子さんがおっしゃるのは、いったいどういうわけでしょう。
一見したところ、そんなふうには見えないかもしれません。
ですが、どうぞその金子さんの分厚い「本」の作品の前にお立ちになって、ページをめくってみてください。
そこに次々に現われる、金子さん自身の絵とことば……そしてこれは江戸時代の教本?……はては服の布地……東南アジアの紙にアフリカの紙……ページを繰るたび、めくるめく不思議な光景を目にされることでしょう。
いくえにも折り込まれた無数の作品、まさにこれは小宇宙です。
それとも、表紙をめくったとたん、あやしい魅力で読む者その世界へと引きずり込むブラックホール……?
そんな危険で心躍る罠が、強い引力を放ちながら会場のそこここで皆さんを待ち受けています。

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近年取り組んでいらっしゃるこの本をテーマとしたシリーズを、金子さんは「地層・知層」と名付けています。
「地層」は分かりますが「知層」とは不思議な言葉です。
それをとても象徴的に表わしているような作品が、さて会場に「浮かんで」います。
近づいて見ると、これもまた宇宙空間をただよう惑星のように見えます。
少し地軸が傾いているのは、何だか地球に似ているようです。
そして驚いたことに、その表面を覆っているのは、またしても、本、何冊もの本です。
大地の層ではなく、その惑星には本のページの層が積み重なっているのです。

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「人類の幸せの叡智の詰ったはずの本は、歪んだ知層となり、地球の地層と似てきた。」――― 展覧会紹介ページの金子さんの言葉です。
「歪んだ知層」。
確かに、かつて「知は力なり」と言った、人類を進歩へと導くはずのその力が、
人類自身と地球環境を破壊する暴力と化してしまった現代です。
どうぞこの前にたたずんで、金子さんの作品が訴えてくるメッセージに耳を傾けてみてください。

開かれたまま塗り込められた本のシリーズが、また皆さんに強い印象を与えることと思います。
それは風化し、朽ち果てようとしているようにも見えながらも、消え入るどころか、圧倒的な存在感を訴えかけてくる作品です。
金子さんはドイツの強制収容所跡を訪ねたときのことも書いていらっしゃいました。
そのナチス・ドイツはかつて大規模な焚書も行ったのでした。
これはそんな試練をくぐり抜けてきた本のようにも見えます。
そして、急速に叡智から遠ざかりつつあるようなこの現代―――たとえそうだとしても、決して叡智は滅びてしまうことはないのだという、そんな力強い希望を金子さんの作品は与えてくれてはいないでしょうか。 

金子善明展は3/4(水)までです。
関東にお住いの金子さんですが、会期中は毎日在廊の予定です。
会場で、ぜひ作品のことをお尋ねになってみてください。
皆様のご来廊を心よりお待ちしております。

スタッフ T