昨年末のNHKでのドキュメンタリーの放送、そして自伝の出版と、大きなトピックが続く木下晋さんの展覧会をB1 unにて開催しています。

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ドキュメンタリー番組「日々、われらの日々~鉛筆画家 木下晋 妻を描く」では、パーキンソン病を患い闘病生活を続けておられる奥様の君子さんを、木下さんが介護しつつ描く日々が映し出されていました。

番組の中でも紹介された、手を組んで横たわる奥様を描いた「願い」(2019年)、そしてまさに撮影中に制作の途上にあった、これも奥様のうしろ姿を描いた「生命の営み」、そのいずれの作品も会場でご覧いただけます。

 

「生命の営み」展示の様子

「生命の営み」展示の様子

 

同じく昨年12月に出版された『いのちを刻む 鉛筆画の鬼才、木下晋自伝』(編著 城島徹)。

一人の人間の上にこれほど多くの悲哀が降り積もっていくものか…と、これを「面白い」などと言ってはあまりに不謹慎ですが、読み始めると途中でとまらなくなってしまうご本です。

また、この自伝の大きな魅力として、木下さんがモデルとして描いてきた元ハンセン病患者で詩人の桜井哲夫さん、「最後の瞽女(ごぜ)」小林ハルさんらをはじめ、白洲正子さん、荒川修作さん、現代画廊の洲之内徹さん、山折哲雄さんなど錚々たる人々が登場し、その出会いがドラマティックに、ときにユーモラスに語られています。

個人的には、瞽女(盲目の旅芸人)の小林ハルさんに、木下さんが「生まれ変わったら何になりたいですか」と尋ねたときのエピソードが深く胸に刺さりました。

そして付け加えさせていただくなら、そうして登場する誰にもまして深い印象を残すのは、木下さんが憎み、愛し、そして描いた放浪癖をお持ちだったというお母様、その何とも言いようのない強烈な存在感です。

 

いのちを刻む

「いのちを刻む」会場でお求めいただけます

 

さて、『いのちを刻む』の出版元である藤原書店の藤原良雄社長と木下さんのギャラリートークが1月11日に催され、大変多くのお客様にお越しいただきました。

お話の内容は多岐にわたりましたが、ドキュメンタリーの撮影時に、テレビ側は「いちばんいいところ」(作品の重要な部分)を描いている姿を撮りたい、木下さんはそこをいちばん撮られたくない…ということで繰り広げられた「攻防戦」の裏話などもお聞かせいただき、会場が笑いに包まれることもしばしばでした。

そして今回、自伝出版のために出版社側が昔の新聞記事を調べ、木下さんご自身はっきりとご存じなかった、お父様が亡くなられたときの詳しい状況を、実に50年以上の時を経て知ったというお話。

さらに、17歳という若さで画家デビューを果たしたときの記事も見つかり、それが自伝を出して良かったと思ったことだとおっしゃっていました。

また、トークのお相手の藤原良雄さんは、木下さんの半生を踏まえ、物質的・精神的な「飢え」というものの重要さを力強くお話しになりました。

 

木下晋さん(奥)と藤原良雄さん(手前)

木下晋さん(奥)と藤原良雄さん(手前)

 

上にご紹介した奥様をモデルとした近作をはじめとして、桜井哲夫さん、小林ハルさんらを描いた木下さんの代表作といえる作品を集めた、非常に充実した作品展となっています。

映像では決して伝わらない繊細な鉛筆のタッチを、そして圧倒される迫力と深みを間近でご覧いただける貴重な機会です。

会期は1月22日までです、どうぞお見逃しになりませんよう。

皆様のご来廊を心よりお待ちしております。(T)

 

トーク3