ギャラリー島田での前回の個展が2014年、

2度目のご登場となる貝塚理佐さんです。

展覧会紹介ページの文章でもお書きになっているように、

古来から自然の情景に思いを託し詠まれてきた和歌の精神に心を寄せつつ

制作をされたそうです。

自然をありのまま写実的に描くというよりは、

自然に触れたときにわきおこる感覚や、

その感覚の記憶、

そういううつろいやすいものがイメージとして絵の中に留められているようです。

絵をながめる私たちのなかにも、静かにそんな感覚が呼びさまされます。

 

月の桂

 

「夜」や「月」ということばをタイトルにもった作品が多く並びます。

カツラの木を描いたという作品は、万葉集の湯原王の歌、

 

目には見て手には取らえぬ月の内の楓(かつら)のごとき妹をいかにせむ

 

を思いつつ描かれました。

中国には、月にカツラの木が生えているという言い伝えがあるのだそうです。

それは高い理想の象徴としての木で、湯原王の歌は意中の女性をそのカツラに例えて詠まれています。

 

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そういう月と夜の静かな森を通り抜け、不意にこの作品を前にして、

驚きに思わず声が漏れてしまいました。

貝塚さん自身がお撮りになった写真の上に、蜜蝋などを使って描かれています。

先ほどまでの静謐な世界と打って変わって、とても現代的な、

神経に直結してビリビリと刺激を伝えてくるような鮮烈さです。

この作品の前に立たれて、皆さんはどんなふうにお感じになるでしょうか。

 

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ほかにも和紙にプリントされた、独特の美しい陰影をもった写真のシリーズが展示されています。

記憶の深いところに眠る草むらの光景が、そこで神経叢の形と一緒になってしまったかのような…

 

会期は11/21(木)までです。

どうぞお見逃しになりませんよう。

みなさまのご来廊を心よりお待ちしております。(T)