ギャラリー島田では初めての展覧会となる細馬千佳子さんです。
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北大西洋に浮かぶフェロー諸島でのアーティスト・イン・レジデンスを終えての個展。
今回そのフェロー諸島で制作された作品も展示されています。
写真は、展示中の細馬さんの陣中見舞い(?)にいらっしゃった松谷武判さんと神野立生さん(前日まで松谷さん、神野さんの「四人展」が同じ会場で開催されていました)。
写真の右手前、大きな大きな黒い絵具のしずくがひとつ落ちて、それが飛び散ったかのような作品があります。
ですが、その塗りこめられた中心をよく見ると、冷え固まった溶岩の亀裂からまだ熱い溶岩が燃えているのがのぞいているような、いくつかの色がちらちらと見え隠れしています。
また、フィルムに彩色された小品は、ほとんどデジタル作品かと見紛うような鮮やかさと油彩の深みをあわせもった、それは美しい作品です。
さて、展覧会初日には細馬さんによるパフォーマンス(公開制作)が行われました。
敷き詰められた白い布。
その上には回転する台。
黒い衣装に身を包んだ細馬さんが、白布の上のフィルムに赤い絵具を注ぎます。
その絵具が布の上でまた別のフィルムに移されたかと思うと、今度は何とそれが高々と吊り上げられ、台の上に赤い雫を落としはじめました。
すかさず細馬さんが台を回転させはじめます。
落下する絵具のその偶然に委ねながらも、そこに形が与えられていきます。
フィルムを高く掲げたまさにそのときでした、さーっと風が吹いてフィルムを揺らし、その風の形までもが作品に刻まれたかのようでした。
居合わせた誰もが最後まで息をのんで見守り、作品が完成してスッと緊張が解けたとき、皆不思議な感動に襲われました。
そこに立ち会った私たちにとっては、それは出来上がった作品というより、そのとき、その場所、あの風、そしてそれを見つめていた私たち自身の何かしらもそこに刻印され息づきつづけている、そういう何かでした。
会期は11月20日までです。
今回のパフォーマンスで制作された作品、また同日に公開制作された「チェーンダンス」という作品もご覧いただけます。
皆様のご来廊を心よりお待ちしております。(T)