ギャラリー島田では初の作品展となる古巻和芳さん、

deux (ドゥー)とtrois (トロワ) の二会場での展示となります。

展覧会紹介ページはどうぞこちらをご覧ください。

 

展示1

 

古巻さんはこれまで各地の芸術祭で、土地とその記憶をめぐる作品を発表してこられました。

今回deuxでは、詩人 安水稔和さんの詩集『地名抄』から引用された詩句と、

その詩に詠まれている土地の地図が重ねられた作品を展示しています。

江戸の旅行家、菅江真澄の足跡をたどって詩作/思索した安水稔和さん、

その精神に感応して、古巻さんはそれを、現代的なシャープさと、

人の営みの手触りを感じさせる温かみを併せもった、

独自の作品世界に表現していらっしゃいます。

 

展示3

 

「奥戸」(おこっぺ)という作品では、二つの村落から同じ草原に馬が放牧されるならわしが詠われています。

地図の上に配されたその言葉から、馬たちがその土地を駆け巡っていた様子が目に浮かぶようです。

そして春になると、馬たちの耳に入れた刻み目を手掛かりにわが馬を探し当て、おのおのの村に連れ帰るのだそうです。

ほかにも「前鬼」(ぜんき)、「風合瀬」(かそせ)など夢想をかき立てずにはおれない土地の名が並びます。

「土地の名前というのは、それぞれの土地のもつ歴史が、地の底の深いところから現代に立ち上ってきているようなものです」

古巻さんはそんなふうにおっしゃいます。

 

展示2

 

そして、そういう土地の歴史、それも、他でもない、ここ神戸の、

そして更にいえば、ギャラリー島田のあるこの山本通付近の歴史、

その記憶に正面から立ち向かったかのような作品が、

troisで展示されている「神戸―ユダヤの聖句を拾う」のシリーズです。

街角からかき集められようとしているのは「流氓(るぼう)ユダヤ」の記憶。

およそ6000人という多くのユダヤの人々が、かつてナチズムから逃れる亡命の旅のさなか、一時神戸に滞在したといいます。

古巻さんは街角の風景に、誰かが不思議な手鏡をかざす写真を撮影しました。

その手鏡には、ユダヤ教の聖典である旧約聖書からの言葉が、

彼らの境涯を象徴するかのような言葉が、浮かび上がります。

住み慣れた街が別の顔を見せ、訥々と記憶を語り始めます。

「立ち向かう」と上に言いましたが、どちらかというと、悲しみをそっとすくい上げるような古巻さんのまなざしです。

 

サロン1

 

さて、9月28日にはギャラリートークが催され、古巻さんによる解説、

そして後半には詩人の季村敏夫さんとの対談が行われました。

季村さんの投げかける鋭い問いかけに古巻さんが誠実に応答する、そのやり取りの中で、

会場で私たちを取り囲む古巻さんの作品にまた新しい地平が切り開かれていくのをまざまざと見る思いでした。

質疑応答も白熱し、充実したひとときとなりました。

 

サロン2

 

展覧会の会期は10月9日(水)までです。

会場では安水稔和さんの詩集をはじめ、古巻さんの作品を読み解くたくさんの資料もお手に取っていただけます。

どうぞお運びください。

ご来廊を心よりお待ちしております。(T)

 

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制作協力/アクリサンデー株式会社