現在deuxとtroisで林哲夫書店と摘星書林をそれぞれ「開展」中の林さんと戸田勝久さん。

お二人のギャラリートーク「本くらべ ハンター坂の晝さがり」が12月12日に催されました。

本を偏愛し、画家のみならず装幀家としてもご活躍のお二人が、おのおの自慢の蔵書9冊+お軸を一幅持ち寄って語り合うという趣向です。

戸田さんと林さん①

先攻後攻ジャンケンで戸田さんの番からとなりました。

一冊目に選ばれたのは龍膽寺雄(りゅうたんじ ゆう)の短編集『塔の幻想』。

こちらは戸田さんが本格的に本づくりに携わった最初の一冊だそうです。

戸田さんは、耽美と幻想の世界を描きつづけた山本六三さんの教室に二十代で入門、山本氏や仏文学者・生田耕作さんらの深く関わる出版社「奢灞都館」(サバトやかた)にご自身も関わっていくことになります。

生田氏が編んだ『塔の幻想』に、戸田さんは挿絵を制作、広政かおるさん(生田夫人)と共に装幀も手がけました。

塔の幻想

そして後攻の林さん。

本を愛し、本を愛する人を愛す林さんが最初に挙げたのは、最近亡くなられた、ご縁のあった方々への追悼の2冊、評論家・坪内祐三『変死するアメリカ作家たち』と川島昭夫さんの寄稿する雑誌「ソムニウム」でした。

川島昭夫さん(京大名誉教授)はイギリス文化史の大家ですが、無類の古本好き、古本祭りの初日に行けば必ず会うという京都では有名な「古本おじさん」だったといいます。

「尊敬する、大好きな人でした」と林さん。

そしてその後、林さんはロードス書房、街の草、口笛文庫、花森書林など、それぞれのお店で手に入れた名品・珍品・大掘出し物を紹介しながら、神戸・阪神間の古書店をめぐるツアーへと私たちをいざなうのでした。

戸田さんと林さん②

昔気質の名物ご店主で知られていた、いまはなき黒木書店(元町商店街)。

気に入らないお客は店から追い出したといいます。

林さんは不思議に気に入られて店でご店主の講義を聞かされることになったそうですが、すると戸田さんが、「まだ幼稚園だった娘を連れて黒木書店に行ったら、娘にミックスジュースを注文してくれましてね、僕の分も。買う本を選ぶのに苦労しましたねぇ」と、楽しい話が次から次へと。

戸田さんと林さん③

戸田さんの生田耕作氏をめぐるエピソードも尽きることがなく、生田氏からもらった訳書(マンディアルグ『燠火』)に勇気をふりしぼってサインをお願いしたというお話。

書斎に泊めてもらったときから目をつけていた蔵書があとで生田氏のご好意で手に入ったという話。

その本(萩原朔太郎『猫町』昭和10年刊)は特注の桐箱に入れて大切に保管していらっしゃいます。

踊り候え

 

林さんのお話にはギャラリー島田とも縁の深い風来舎の伊原秀夫さんがたびたび登場しました。

伊原さんには最近も島田誠の『声の記憶 「蝙蝠日記」 2000-2020 クロニクル』を編集・出版していただいたばかりです。

風来舎から出された鴨居玲の『踊り候え』を手に、伊原さんとの出会いがきっかけとなって本作りに深く関わっていくことになったとお話しになりました。

お軸対決

 

面白い話といえばきりがありません。

好きな方にはたまらない、たいへんな濃密な時間でした。

感染症対策のため定員を限らせていただいたこともあり、ご入場いただけなかったお客様は申し訳ございませんでした。

ぜひまたいつか、このような機会をお二人にもっていただきたいですね。

(スタッフT)

戸田さんと林さん④