~RE-CREATIONS~
陶芸作家のやきものが割れたり、焼きむらになる事はタブーです。それは即ち欠陥作品を作る事になります。ところが私はある時、作品制作中の形を整え、これから焼成と云う時に壊れてしまいました。展覧会で再制作の時間がありません。そこで困って思案したあげく、開き直って壊れた破片をそのまま焼いて繋ぎ合わせたところ、それが思わぬ面白さと力強さに気付きました。 陶芸家は自分のもてる技術でもって土に対峙した時には、その素材と戦い、ねじ伏せ、征服しようとします。しかしそれだけでなく、時には、それに身を委ねる事も必要です。前述のように思わぬ効果を発見する事もあり、そこからまた新たな発想が生まれます。
創って、壊して、焼いて、繋ぎ合わせて完成する。私はこのRE-CREATIONSシリーズに取り組んで1984年から28年になります。
私の作品形体は概ね抽象形です。まず白雲土や磁土にて、手練り、タタラ、時には石膏型を使用したりして、かたちを作ります。順次そのかたちを整形し、乾燥させた後、細かいサンドペーパーで削って、更に整形して完全な形にしてから、研磨用の光沢のある石で表面を磨き上げ光らせ、それを数辺に割ります。これはどのように割れるかはコントロール出来ません。そうして割れた破片を三つに分けそれぞれ、黒陶、白陶、窯変の窯に入れて焼成します。これらが焼き上がるとそれらの破片を接着剤にて繋ぎ合わせて元の形に再生します。最後に表面の接着面の目地に石膏を埋めて仕上げます。このRE-CREATIONにて人の手によって造形されるものと、自然の力が作用される事によって作り上げられるものによる調和が、この作品の神秘性と楽しさを与えてくれています。
今回は大工道具を発想の原点として、私の身の近辺にあるものをモデルとして制作しました。 また他に陶芸家の本分としての花器も制作していますので、それも合わせて発表します。
寄神宗美
陶芸とは土が成形され炎に焼かれて作品として生まれる。寄神さんは、創って、壊して、焼いて、繋ぎ合わせて完成する。それは制作手法としての「再生」である。そして再生されるものは、身近にあるモデル、今回は手工のために手工でつくられた大工道具である。その機能美と物質感が、異なる素材である陶によって「再生」される。時折、思いがけぬところで寄神さんの作品と出会う事がある。そして瞬時にそれと分かるほど際立つ存在感を漂わせている。今回は、陶芸家の本分としての花器もご覧いただきます。
島田 誠
*収益の一部を「アーツエイド東北」へ寄付させて頂きます。
◆B1F deuxにて 12:00~19:00
※火曜日は~18:00、最終日は~17:00まで。
6月25日(土)17:00からオープニングを行います。