~祈りの心~

栃原敏子展

「矛盾に向き合う」 島田 誠

詩人を夢見る少女であった栃原が画家となったのは30才になったばかりの頃の現代美術家、奥田善巳・木下佳通代 との出会いであったという。
とりわけ奥田からは画家としてのみならず、人としての生き方そのものに大きな影響を受けたという。1990年ころから画作発表をはじめた、その頃の作品は 「道化」 を借りながら、描く喜びとアグレッシブなエネルギーに溢れている。 そして震災。
ボランティア活動に身を捧げながら、多くの死や破壊された街に直面したが故の「 命の尊厳」 「再生」 へとさらに強烈なパワーを発揮する。 その歩みは「命を脅かす」社会的要因を踏まえ、人間の醜さと優しさの狭間で引き裂かれる自我を凝視し、より強く「命の豊かさ」を主張していく。ナイーブな栃原は生き方そのものを社会化させたと言ってもいい。しかし、 栃原絵画の特質としての強烈な色彩や、選び取られた色や画面の明快さに隠されていた栃原が抱えた孤独、含羞にこそ、栃原にとっての描くとうい行為の根源的な意味が存在する。
第2画集「TOSHIKO TOCHIHARA 2007 – 2009」で、栃原は下記のように書く。 「キャンバスの上には… それは限りなく .. さりげなく.. 心地よく….

そして美しくなければならない、そこにある心の叫びの真髄を.. 限りなくやわらかに.. 包み隠すようにこぼれる光の一条の線を描きたい.. それはまばゆく力強くそして優しく.. (略) 」 赤ん坊が呼吸をはじめたように、人間生命の営みの全てに向かって、無意識に手が動く。まるごと自然に。自意識につまずくことがなく。栃原の近作は、いま、事象を削ぎ落とし、超へながら夢中で全身で世界に向きあい、しかし、同時に刻々の営みの矛盾、我の矛盾に向き合いはじめている。

1997年 ニューヨーク個展
SOHOアートフェスティバルでファーストルック賞を受賞
ザ・ニューヨークパブリックライブラリーに画家として登録される
1998年 ニューヨーク近代美術館に画家 として登録される
1998年-1999年 アメリカの経済誌「インターナショナルエコミー」で作品が世界中に発信される
2007年 第1画集出版
2008年 ARTENIM南フランス国際アートフェア選抜出展 /公式入場券とパンフレットに作品が使用される ST-ARTストラスブール・ヨーロッパ現代アートフェア選抜出展 豊田市美術館ギャラリー「Tosh iko Tochihara」展
2009年 ニューヨークの大学に招待展「Toshiko Tochihara」展 亀高文子記念赤艸社賞受賞(兵庫県芸術文化協会)
2010年 2画集出版 ニューヨークマンハッタン招待展 ルーマニア招待展(ブカレスト)  ミレー晩鐘150周年記念展(バルビゾン)  ARTENIM南フランス国際アートフェア選抜出展図録掲載
2011年 岐阜現代美術館 栃原敏子「魂の詩」展
2012年 韓国EXPO 韓中日特別招待展 (韓国イマウエル美術館)
2013年 第3画集出版 国内外で展覧会多数

「他者との対話で成りたつ絵」 針生 一郎

栃原敏子の絵といえば、鮮烈にひろがる赤や黄と重たくたれこめる黒の対照、はげしく炸裂する筆致など、抽象的な要素がまず思いうかぶ。だが、よく見ると作者のモチーフはつねに人間、その栄光と悲惨、聖性と獣性の両極にわたる振幅なのだ。そうしたはてしない振幅をみきわめるため、彼女はときに太陽の光に照らされた宇宙、宇宙のなかのみえない生物のいのちをみつめ、また画面を抽象化せずにはいられない。それでいて造形から物語が消えてしまった今日、彼女の絵は観衆のうちに自由に劇的な物語をよびおこす力量すらそなえている。(略)眼にみえないものをも凝視し、あるいは内観しようとするから、彼女はやすやすと具象と抽象といった便宜的な分類をこえてしまう。そして、このような観察・凝視・内観によってみいだされる人間の深渕と、その深渕のなかでこそ確認される夢、希望、人間の可能性について、つねに率直に心をひらいてやはり他者としての観衆に語りかけ、はげまし、元気づける姿勢もまた一貫している。作者が自己を客観化して他者になり変わり、他者の眼で世界をみつめるいとなみが、芸術制作の欠かせぬ要件であることを、彼女は観察の対象としての他者と作品の受け(読者、観衆、聴衆)としての他者とのたえざる両面の対話をとおして、明確に自覚していたからだ。(略)

静かなる夜にー 答えのない想いが散っていく―  風の音も。。  雨の音も。。  木々のそよぐ音も。。 確かにそこに存在するものがあるのに。 終わりの見えない私の― 存在の痕跡っていったい何。 イメージを追い求めて描くのではなく― 人間の存在の意味と 確かなる愛を描きたいために― 社会に起こる様々な出来事に私の心はちじに乱れて 心が痛く私に襲いかかる。 何も出来ない自分。 時ばかり。。 無駄に過ぎて。。 そのあとようやく― 一つずつ噛みしめるようにキャンバスに向えば。 見えなくても確かにあるものが見え隠れする 自分の中が空っぽになったときにだけ感じ始める― あの感覚―  あの波動― あの不思議な力― 一つの色を手にとれば そこから流れ出るしずくは無限の色の波― それは神の力か。。

栃原敏子

【関連企画】
第257回火曜サロン 野瀬栄進ジャズ・ソロ・ライブ
5/21(火)19:00開演 ¥3,000(ask会員¥2,500)
*詳細は火曜サロンのコーナーを御覧下さい。

◆B1Fにて 12:00~19:00
※火曜日は~18:00、最終日は~17:00まで。

■会場の様子 ※画像をクリックすると拡大して表示されます。

会場の様子1会場の様子3会場の様子5会場の様子2会場の様子4会場の様子6