子どもの頃友達が少なかった私は、毎日のように里山深くの沼でひとり遊びをして過ごした。
夜明け間もない水辺、目の前にあるものすべてが理解の及ばない不思議に満ちていた。ファンタジーという言葉など知る必要もなく、足元に神秘があり、あこがれも恐れも常にそこにあった。
ちいさな子供がひとり泣こうが叫ぼうが、そんなこととは何のかかわりもない、遠く深い美と畏敬の存在の中にいた。

いまはすべてアスファルトの下。美しく恐ろしかったそれらは、もう痕跡すら辿れない。
景観として住む人にすら見捨てられたような我が町は、なぜか最近世界遺産になった。

私は今も、性懲り無くひとり遊びをしているようなものだと気づいた。画布の中で、私の心を作ったと言えるその場所をおもう。
アスファルトに釣り糸をなげうって、その下の水源にたどり着くのを待っている。
森井宏青

会場:B1F un
会期:2022年3月19日(土)-3月30日(水)
11:00-18:00  ※最終日は16:00まで