わたしが須賀敦子さんと知り合ったのは、『ミラノ霧の風景』がひっそりと出版され、この人いったいだれ?  というさざめきが出版界に広がった1990年のことでした。編集者が企画した忘年会で須賀さんに会い、翌年、ロングインタビューをさせていただいた縁で親しくなり、よくお話をするようになったのです。ところが、それから8年ほどで須賀さんは逝かれてしまい、そうなってはじめて須賀さんについてなにも知らないことに気がつきました。どんな人生を歩まれたのか、わたしなりに「須賀敦子像」を描いてみたいと思い、ミラノ、ヴェネツィア、ローマに彼女の足跡をたどり、親交のあった人々を訪ねました。今回の展示では、だれにも似ていない須賀敦子の生き方を知ることができたその旅の断片を、写真でお見せしたいと思います。
大竹昭子

 

消える霧 つもる思い
大竹昭子の写真によるイタリアの古都を巡る須賀敦子への旅。日本とイタリアの文学の翻訳を通じた架け橋はやがて須賀の深い眼差しと交友が独自の文学を拓く。今、ミラノから霧は消え、独自の光彩を放ったコルシア書店なく、海文堂書店もない。ペッピーノなく、この古都を何度も旅した私の連れ合いもいない。しかし、文学も写真も永遠を伝え、ミラノ・スカラ座のプリマドンナの縁で私たちと深くつながってきた武谷なおみも須賀の素顔を語る。思いは静かに降りつもる。
島田誠

 

◆ 9月7日(土)16:00~ トークショー 大竹昭子×武谷なおみ 要予約・¥1,000 

会場:B1 un
会期:2019年9月7日(土)~9月12日(木)11:00-18:00
※最終日は16:00まで