ローズグレイの黄昏の中。哲学者のペンになった桟橋の上。誰でもない誰かが微笑んでいる。断崖の風が海嶺を予感する時刻、誰かの影は長さを失う。紺碧の空を飛ぶために、手を振る明日を見つけるために、整数のように爪先立ってみる。中世からの逆光の煌めき。そんなことを思いながら、ぼくは冗談のように街を彷徨い、確かな何かを探している。誰でもない誰かが誕生する早朝。静寂の記憶と季節の越境。地図に載らない港の近くで、詩の中に生き、詩からの脱出を試みる。言葉をもたない鳥のように、ローズグレイの日常を信じながらも疑っている。それがぼくたちの存在理由なのかもしれない。
矢原繁長

会場:1F trois
会期:7月14日(土)〜19日(木)11:00-18:00
※最終日は15:00まで