増田寿志

そのスズメは電柱上部の巣穴で待つ雛たちへと、繰返し餌を運んでいた。田園風景が広がる山村ではありふれたいつもの光景のひとつ。ただ、いつもと違って見えたのはスズメがその右足を失っていたからだ。何をするにも上手くバランスが取れない様子で、羽根や羽毛が随分と痛んでいた。その後、再び姿を見かけることがないまま十年ほどの月日が過ぎた。今も何かの折にその様子を思い出す。” いのち”とはなんだろう。与えられた状況の中である時は淡々と、そしてまたある時は身を削るかのようにその役割を終えていく。小さく、弱く、脆い、しかししなやかで打たれ強い。力強くも繊細な眩い輝き。ぼくも、その仕事も、そこへ近づいて行けたらと思う。
増田寿志

1F deux 10/4(土) ~ 10/9(木) 12:00~19:00
*火曜日は ~18:00、最終日は ~16:00