サバービアの庭より

川嶋守彦展

僕の好きな映画にヴィンセント・ギャロの「ブラウン・バニー」と言う映画がある。
恋人を失ったバイクレーサーがアメリカの何気ない風景の中、車で亡き恋人の幻影をウジウジ探しまわるだけで、本来の僕の趣味では無いタイプの映画なのだが、なぜか退屈せずに見入ってしまう。それは、映像の美しさも然ることながら、全編に漂うサバービア(郊外)の埃っぽい空気感が、フイルムに赤く焼き付く西日と共に、僕を引きつけるからだ。
ギャロ自身、貧しい郊外住宅の出身者らしく、「住民は皆テレビにかじり付き、そこにあるものはすべてくだらない。やることと言えば、女のパンティーを脱がしたり、物を盗んだりするしかないんだ。恐ろしい町だよ。本当におそろしい」と語り、嫌悪感を示すが、彼の映画はすべてサバービアが舞台になっている。その他、デビット・リンチやスピルバーグもサバービアンで、郊外がよく舞台になる。両者ともに好きな映像作家である。
かく言う僕もジャパニーズ・サバービアンで、いわゆるニュータウン育ちです。小学生の頃に引っ越してきたが、以前住んでいた下町とは異質な場所だった。近所にうどん屋もなければ銭湯もない商店街も無いし、お寺もない。あるのはスーパーマーケットに学校、公園やマンション。すべて新しく、同じ様な家族構成。フラットに整地された当時の未来住宅地だったわけです。そんな場所に僕たちは遊び場所をみつけ、町の隙間に秘密基地を作った。(公園では遊ばなかった)この町はどこかの官僚やデベロッパーが構想した、人工的で面白みの無い町だったと今なら思うが、当時は町のデットスペースを探すのに必死だった様に思う。均一に「あらかじめ作られた」空間の中で官僚やデベロッパーの描いた図面には見えない導線の空白のような場所を見定めるのである。そういう場所で育った者は「あらかじめ作られた」モノに過敏である。必然的に天然モノを探すようになる。自分は天然モノにはなれないけれど、発見したり、収集したりはできる。ぼくが古いものや無垢な薄汚れた物が好きなのもそんなところかもしれない。
ぼくは自身の作品においては、きっと官僚的なんだろう。それは「あらかじめ作られた」絵画そのモノなのだから。作られたものを嫌悪しつつ、それに擬態するしかない救いようのない悲しさがけっこう好きだ。
そして、「あらかじめ作られた」絵画には、秘密基地を作ることの出来る「まぬけな場所」がきっとあるはずだ。

川嶋守彦

◆B1F deuxにて 12:00~19:00
※火曜日は~18:00、最終日は~17:00まで。

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