2022年4月「11年」

東日本大震災から11年になりました。
私の生き方に大きな影響を与えた二つの震災。神戸と東北。
1995年の阪神淡路大震災。そこから立ち上がろうとした「アート・エイド・神戸」。
そして2011年3月に発生した東日本大震災では「アーツエイド東北」の設立に関わりました。
振り返れば4月の初めからその後の1年半ほどひたすら被災地を巡礼のように歩きました。
そして6度目の東北入りをした私が「せんだいメディアテーク」で運命的に加川さんと出会ったのでした。
神戸の震災から立ち上がったものとして「この巨大絵画を神戸で」と思い詰めて伝えました。
そして会場探しに奔走しました。巨大ゆえに入る会場がなかなか見つからず、いよいよ諦めかけていたとき、KIITO(デザイン・クリエイティブセンター神戸)と出会いました。
奇蹟的に寸分たがわぬ寸法で加川広重の巨大絵画「雪に包まれる被災地」「南三陸の黄金」「フクシマ」がおさまり、「巨大絵画が繋ぐ東北と神戸プロジェクト」を開催できたのです。
私がひたすら被災地としての東北を歩いたことを踏まえて赤坂憲雄さん、髙村薫さん、加川広重さんと私との対談をしたのが、プロジェクト2年目の2014年。
その詳細を『こころざしの縁ー東北の復興、福島の復興と日本の明日』としてアート・サポート・センター神戸から刊行しました(2014年10月15日刊)。
3年目の2015年には福島の原子力発電所建屋を描いた「フクシマ」を迎え、最大規模でプロジェクトを開催しました。
その後、フランスのMortagne-au-Percheでは、テロの影響で規模縮小となりましたが、「11/3/11 FUKUSHIMA」として開催。記録誌(フランス版)も刊行され、大きな話題になりました。

黙然をりて

樹木とは   山崎佳代子

三本の手をお持ち

背中の三本目の手で

誰かと繋がっておいで

旧い東の歌を

母の国の言葉で

誰かがくちずさむ

思いをめぐらせば

あらゆるものは

結ばれている

目に見えぬ者が

男の土地に旅女を

つなぎとめたように

沙羅双樹の幹に

若枝が芽を吹いて

木の葉の手をひろげ

四月の光を浴び

人は樹木なのか

森とは人の輪なのか

背中に芽生えた

新しい手をひらく

まだ見ぬ人の手を求め

手とは

天からふりそそぐ

光のことにちがいない

詩集 黙然をりて 2022年3月10日 刊行 書肆 山田

東日本大震災から11年の日に山崎佳代子さんの詩集『黙然をりて』が届きました。
装幀は扉野良人さんです。
2019年10月には「ドナウの小さな流れ、小さな水から視る世界」と題し、山崎佳代子さん、季村敏夫さん、扉野良人さんにギャラリーでお話をしていただきました。
刊行を準備しているブックレット『パンデミックの時代に』に山崎さんのベオグラード(セルビア共和国)からの寄稿も掲載されます。