2020年5月「パンデミックの危機に」

今回は「パンデミック」特集のようになりました。

世界中がコロナ戦争の渦中にある。こうした有事にこそ本性が露呈する。 今、日本が直面していることは事々に予見されてきたのに様々な目くらましの熱狂のうちに有耶無耶の崖っぷちにある。

歴史は繰り返す。馬鹿げたことには惜しみなく浪費し、富む者、貧しい者は極端に上下に分離し、糾すべき為政者は恐ろしく空虚だ。

ウイルス禍は遅すぎる緊急事態宣言で慌てふためいている日本より早く、国を挙げて取り組んできたドイツ(藤野一夫)、英国(きたむらさとし)、フランス(松谷武判)、イタリア(武谷なおみ)について報告いただきます。(特集  P2,P3)

そして私たちを取り巻く全ての芸術文化の休止状況に対し「何をなすべきか」を悩み、議論しながらたどり着いた、「こぶし基金による緊急支援助成」について説明いたします。(P4)

この取り組みが小さな「希望の灯」であることを祈っています。

予定した展覧会は次々と中止、延期に。開催に漕ぎつけても中断(予約者のみが入場可)となりました。

3月の「小谷泰子展ー青の断片から青い闇へ」「加川広重展 3.11 夜が明けるまで」、4月「アートの架け橋」5月「片山みやび展」「里井純子展」は延期に。これらは全て準備が整っていました。

それ以降も、坪田昌之、長沢秀之、佐藤有紀、須田剋太、金井和歌子・・・など予定していた展覧会の目処が立ちません。狼少年のように、こうしたことを何度も繰り返してきていますので、確定出来るときを待ちたいと思います。

皆さんと共に

私たちが取り組んだ時代の危機を伝える『アネモネ戦争』プロジェクトは、まさに今の危機を撃つものでしたが、出版記念展の半ばで政府の緊急事態宣言で休止になりました。プロジェクトを率いた松田素子さんに毎年恒例の、交流を軸にした「ミニアチュール神戸展 」に代わる、この危機の今に向かいあう作家としての表現を求める企画のテーマをお願いしました。

最近のテーマは、 「ホワイボン」「いまこそわたれわたりどり」「ありがとがんす」「わたしのカフカ」「わたしの万有引力」など、ユニークで宮沢賢治に繋がるものでしたが  今、私たちが直面している危機は国境も人種も階層もこえて「生きとし生きるもの」を脅かし続けています。

「未来圏から!」

諸君はこの颯爽たる 諸君の未来圏から吹いて来る 透明な清潔な風を感じないのか     (最初の一節)

新たな詩人よ 雲から光から嵐から 透明なエネルギーを得て 人と地球によるべき形を暗示せよ     (最後の一節)

宮沢賢治 「詩―生徒諸君に寄せる」より

 「今、伝えなければ」という思いに溢れた場でありたいと願っています。

成すべきこと

私にとって第2次大戦、すなわち敗戦は3歳の時。阪神大震災は53才。東日本大震災は69才。今ある危機は77才。敗戦時は幼く、ただ立つことを覚えただけだが、その後の大きな体験では芸術文化の復興の活動に関わってきた。『アネモネ戦争』は危機を伝えるものだったが、その危機が更にこの国を分断し、何よりも「人が人としてある」ことを失った日本のリーダーの姿。

コロナ危機の先には大恐慌が待っていると言われています。そして社会の分断へと続くことが懸念されます。

身を捨つるように、問うこと、そして行動に移さねばならない。