3月11日が巡ってきました。被災地といっても斑模様、復興もまたしかりです。経済全体が停滞するなかで、成長、インフレ、国土強靭、防衛、原発再稼動などの、どこ風ふくの風潮は、私はとても眼をつぶってやりすごすことは出来ません。縮小、平等、国土柔軟、協調、脱原発など、豊かさを問い直すことが大切なことに違いありませんし、それを私たちが日常のものとしていきたいと思います。
権力(ないし戦争)は、絶えず離合集散をくりかえすわれわれの無数の合意、無数の無関心、無数の断念、無数の倦怠、無数のシニズム、無数の沈黙をいちばんの養分にして、ある日むくりと巨体をたちあげてくるのである。テレビを消せば、かれと私の関係は切れる。だが、私のあきらめは、権力の腐敗と増殖をしずかにささえ、ひるがえって、私自身を刻々荒(すさ)ませるのである 辺見庸「水の透視画法」(共同通信社)
ゆっくりと孵化する
なぜだか自分の領域がかってに拡がっていく。何故だろうかと訝(いぶか)る。いまさら欲や見栄に背中を押されるわけではない。なにかが、こうすれば出来ると浮かんでくる。その夢想から何か大切なものが生まれることだけは確かなのです。藤崎孝敏さんの三つの個展、松村光秀さんの七つの「偲ぶ展」の開催、伊津野雄二さんの三つのギヤラリーが協力しての作品集の出版、石井一男さんの各地への展開、生誕百年・没後10年の西村功さんの二つの美術館での記念展の開催。これらはプロジェクトと言える規模ですし、「アーツエイド東北」を核とした東北志縁、「雪に包まれる被災地」プロジェクトなど、ふとしたアイデアが確かな像を結んできた例ですが、べつに捻り鉢巻きで頑張っているわけではありません。苦労をかけるスタッフも淡々とした日常のなかで取り組んでくれています。静かな早朝の自宅の小さな書斎から生まれた卵が、ゆっくりと孵化してくるリズムに似ているかもしれません。
加川広重巨大絵画「雪に包まれる被災地」プロジェクト
この通信が届くころには始まっているかもしれませんが、このプロジェクトも不思議なプロジェクトです。加川さんの5.7m×16.4mという被災地を描いた記念碑的な作品に昨年8月、仙台で出会い、神戸で見て欲しいと夢想したことから始まりました。
- 巨大さ故に仙台を出なかった作品が多くの課題を克服してKIITOで展示されます。
- ただ展示するにととまらず東北と神戸を繋ぐものとしました。
- 「志」が繋がっている人々がボランタリーに協力をしてくれます。
- 市とKIITOは場所と設置費用を持って下さいます。
- 助成金を受けずに(後に加川さんに運搬費の一部10万円が助成されました)開催する決意をし、一口1万円の賛同者を募りました。お金よりも、皆さんと共に創るという意識を大切にしたかったのです。
51名(3/13現在)の賛同で運営経費の半額をまかなうことができます。ありがとう。 - なおかつアーツエイド東北への支縁を届けるようにしたいと思っています。
- 神戸の場合にそうであったように、今回も記録をしっかり撮っておきたいと思います。
メディアの取り扱いは表面的にしか捉えてくれませんが、確かな意味を付加するものです。