2013.3 「種を蒔くことは夢見ること」

私の頭脳のどこかにひょいと浮かんだことが次第に焦点を合わせたように形をなし具体化し実現する。とても不思議なことが次々と起こります。 亀井健さんが私に託されたことが公益信託となり公益財団法人となるのに20年。いずれも全国初のことでした。震災後、夢見、発表し、研究会をもったりした「ひょうごコミュニティー財団」がわが財団の事務局を担う市民活動センター神戸の実吉 威さんが中心となって、進水式を終えられまし た。これは私が語りだして15年で形が見えてきました。誇るつもりで書いているのではありません。時代が追いついてきて、形とする人を得てしだいに結晶を成してきているのです。種を蒔くことは夢見ること。そして水をやり、手をかけること。そのことを慈しむことが夢を育てやがて実りを迎えるのでしょう。それが大地に根を下ろしているということなのでしょう。今は、種を蒔くひとが果実を得て結果を手にする、促成栽培ばかりのような気がします。

作家たちの居場所
ながいお付き合いの中で、うちでの発表に止まらず、多くの画廊や美術館での展覧会を繋げ画集を出したり、本を書いたりしてきました。昨年9月に亡くなられた松村光秀さんの場合は主要な作品約120点を信濃デッサン館と佐喜眞美術館に寄贈、それぞれ展覧会が開催され、残りの作品190の写真を取り終え、資料の完璧な整理をはじめています。今年、七つの展覧会が各地で開催されます。
没後10年をむかえる西村功先生はBBプラザ美術館(6/15~9/1)と神戸ゆかりの美術館(6/15~9/23)で、前者はパリを中心に、後者は神戸を中心としながら全画業を回顧します。ギャラリー 島田でも水彩・デッサンを中心にご覧いただきます(6/15~ 26)。
伊津野雄二さんの作品集「光の井戸」は四つの画廊が共同して出版します(7月ころ)。藤崎孝敏さんは公式HPを開設し来年の三つの展覧会をプロデュースし、2年後には画集を刊行すべく準備をしています。
石井一男さんは今年は湯布院で、来年は東北でもご覧いただくべく準備しています。

作品の寄贈プロジェクト・美術作品寄贈プロジェクト
美術館や学校、企業に寄贈・寄贈仲介するプロジェクトを行っています。このたび松村光秀作品を信濃デッサン館と佐喜眞美術館へ計117点、BBプラザ美術館へ西村功と横尾忠則を2点、計3点を寄贈しました。これで寄贈累計点数は222点となりました。

震災との関り

18年前に「アートエイド神戸」を始め7年間、かかわりました。そのことが再び東北大震災で活かされ「アーツエイド東北」へと繋がっていきました。これも私自身が行うのでなく、蒔いた種がかの地に着床をしたのです。そして、ただ自分の目で見、感じ、嗅ぎ、細胞に染み渡らせるように東北を訪ねました。5回目の東北で仙台メディアテークで加川広重さんの「雪に包まれた被災地」の巨大絵画と出会ってしまいました。そして本人にも。東北の震災に思いを馳せながらも行けない方のためにも、また薄れゆく記憶の源へと立ち返るためにも、この絵を神戸に運びたいと思ったのです。でも、これだけの絵を、それにふさわしい場で飾るとなればこれは難しい。しかも多額の費用がかかります。それが、まさに、ここしかないという場に飾られることになったのですから、この期を大切にしたいと思います。「雪に包まれる被災地」が繋ぐ東北と神戸プロジェクトは、こうしてスタートしました。そこで私の役割は終わったつもりであとはKIITOが主催するものとばかり思っていましたが島田のほうが主催するように言われました。せっかくの展示が意味を持つためには、東北志縁の思いを繋ぐ場でありたいと思い直し、全力で取り組むことにしました。時間がない、お金がない、でも、やりましょう。みなさんと。この通信でのお知らせでは間に合いません。とりあえずは同封したチラシに概要をお書きしています。あとは逐次、メルマガやHP,マスコミ報道などでお知らせいたします。
どうか、一人でも多くの方にKIITOにお運びいただきたいと願うばかりです。