「2010年の1.17」
2010年は阪神淡路大震災から15年の年です。震災には深く関わってきました。すべては、あの時、垣間見た新しい道へのこだわりに帰しているといっても言い過ぎではありません。その一つとして、1月17日の「竹下景子 詩の朗読と音楽の夕べ」は、とても大切にしてきました。詩の公募、音楽のゲスト、チラシには、ギャラリー島田に関わる作家の作品を選び、ステージに飾ったり、スクリーンに投影したりしてきました。今回は伊津野雄二さんの作品をおかりします。
伊津野雄二さんを訪ねて
10月某日、岡崎市(愛知)の伊津野さんのアトリエを訪ねた。1月17日の「竹下景子 詩と朗読の会」のステージに、どうしても母子像、木彫「Basis」を飾りたいからです。すでに了解を得ているけど、作品の輸送、梱包、組み立てなど慎重な作業の打ち合わせが必要なのです。とはいえ、その作品に漂う緊張感を秘めた気品とフォルムの美しさ、時折いただく詩文にも感服していて、どんな生活をし、どんなアトリエで、どんな人なのだろうか、との押さえがたい興味に惹かれてでもありました。名古屋で名鉄に乗り換え、特急で25分。東岡崎駅まで伊津野さんが車で迎えに。さらに20分。20戸の集落でのお住まいとアトリエは、廃屋から、手つくりで整えたという歳月に晒された美と、総てが統一されたセンスで、ご夫妻の人柄、越し方が形を成している。31年前に入村されたそうだ。ここで、どこにも属さず、生活の基盤をなす、オリジナルな木工家具などを製作しながら、自然の歩みのままに、信ずる道を歩み、現代と隔絶された豊かな時間を風、光、水、木々、月、星、陽と語り合って過ごされてきた。木彫「Basis」は、左腕に女児を抱え、前方を見つめる等身大より少し大きい母子像ですが、母子ともその凝視の眼差しは厳しく、身構えているようにも見えます。そこに私たちは、様々な思いを重ねることが出来ます。 伊津野さんご夫妻が勇気をもって選ばれた環境が、静かに粉雪が舞い積もるように、月光が遠い記憶を運んでくるように、季節の花々や樹葉が散り落ちて、腐葉となり惠の土壌を用意するように、ぼくたちに流れている時間と違う、季節と自然に素肌で触れ合ったような、ゆったりとした刻がフォルムや言葉を紡ぎ出し、結晶となって生み出されているのです。
竹下景子さんのこと
前回の「1・17」は、火災発生・避難というアクシデントに見舞われ、若干の混乱はあったものの、竹下さんの沈着な対応にも助けられて、無事終了したのでした。女優ということをはるかに超えて、ひとリの人間として、いつも知的に、しかし熱いものを秘めて、毎年、ライフワークとして、取り組んで下さっています。
詩の朗読ですから、良い詩が集まることが前提です。募集方法を改めながら、今年も良い詩を願っています。みなさんも参加してみて下さい。
板橋文夫とミックス・ダイナマイト・トリオ
ジャズ界の人気者、魂のさすらい人・板橋文夫が率いるトリオは、そのパワフルで先鋭的な「宇宙のふるえを伝える」演奏が素晴らしい。そして1998年から10年間、「神戸からの祈り」(註)という岩岡コンサートを南輝子さんたちと続けてこられました。
このトリオこそが、震災15年を飾るに相応しいと確信して、お招きいたしました。
(註)10周年のライブCD「Do Something」のライナーノートを島田が書いています。(販売中)
この会は、震災後に神戸で生まれたNPO/NGOが集まった「ぼたんの会実行委員会」が主催し、収益は、各団体の活動費として還元されています。㈱シスメックスさまは、この事業に5年間にわたって特別協賛して、支えて下さいました。今回が最終回となります。ほんとうに、ありがとうございました。
今後のこと
この会は、震災後に神戸で生まれたNPO/NGOが集まった「ぼたんの会実行委員会」が主催し、収益は、各団体の活動費として還元されています。㈱シスメックスさまは、この事業に5年間にわたって特別協賛して、支えて下さいました。今回が最終回となります。ほんとうに、ありがとうございました。