2006.4「しあわせをありがとう」・西村功先生のこと

「しあわせをありがとう」・西村功先生のこと
 神戸っ子に最も愛された画家、西村功先生が亡くなられて2年半になる。本格的な回顧展が西宮市立大谷記念美術館で 開催されることになったのは私にとって大きな喜びです。
 なんと言っても西村家とは太い絆で結ばれていて、今回の展覧会についても私どものコレクションの出展や資料の提供などで協力させて いただきました。
 困難であっても画集や文集に纏めておくことが大切であることが身に沁みて分かります。
 西村先生の展覧会を最初に海文堂ギャラリーでさせていただいたのが1989年、最後の展覧会が、ギャラリー島田に移ってからの2001年です。 ギャラリー島田のオープニング記念であった先生の展覧会の時には、先生はすでに病床にあり、見ていただくことは出来ませんでした。 その準備の過程で、お宅のガレージの隅に新聞紙でくるまれた初期デッサンの数々を発見し、それらを「西村功初期デッサン集」として画集に 纏め、先生への感謝の思いとして刊行させていただきました。そして、この展覧会のご縁で先生の200号の大作、3点が兵庫県立美術館に 収蔵されました。
 1991年の夏、私は先生の弟さんの文彰氏の導きで、古い倉庫の崩れ落ちそうな階段をのぼって、1950年から76年までの大作群に 出会い、度肝を抜かれたのです。その日は、もう20年も前のように感じますが、あの日、大汗をぬぐったハンカチにべっとりとついた汚れ、 大きな作品を難渋しながら一枚一枚見てゆく時の新鮮な感動に時間の経過を忘れたことなどをまざまざと思い出すことが出来ます。
 そして、それらの作品を整理し、手入れし、撮影し、画集にまとめさせていただきました。
(『西村功画集1950~1976』1991年12月14日発行、海文堂ギャラリー刊、絶版)。
 今、私の手には、いつもしっかり握手した感覚、耳には、あの少し甲高い声での話し声、とりわけ「わかった、わかりました」とにっこりと 笑ったお顔、目には、少年のように澄んだ瞳、街角に座り込んで一心に描く姿などが、懐かしく蘇ります。
 先生のご葬儀を、あたかも西村家の家族の一員として、お手伝い出来たことは、私にとって大きな喜びでした。
そして、その直後に西村先生が過ってお住いだった西宮市の大谷美術館さんに大作を納めさせていただき、そのご縁で神戸新聞社が 企画されたこの展覧会へと繋がっていったのです。

お亡くなりになられた時にギャラリー島田が出した追悼文集の最後は次のように結びました。 

今、私には確信が沸いてきました。
また、きっと「やあ、やあ」と功先生と握手できる日が来ると。

意外にその時は早くやって来ました。きっと会場で功先生が私たちを握手で迎えてくれるはずです。

私の願いは
一人でも多くの方に先生の作品をご覧いただくことです。ご招待券を差し上げます。お誘いあわせ下さい。 

■大谷記念美術館にて
西村功展 -パリを愛した画家- 4/15(土)~5/21(日)

■ギャラリー島田にて
西村功展 -みんなに愛された画家- 4/29(土)~5/10(水)