■□■□2020年2月
Gallery SHIMADA & Art Support Center KOBE Info―1529号 2月17日
清冽
自分を律し、慎み、志を持続して成すべきことを果たす
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1 蝙蝠日記 自分の感受性くらい
2 展覧会から 黒川紳輝展
3 今日の言葉 淡々と生きて行け!
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1 蝙蝠日記
茨木のり子 さんの命日 2006年2月17日 に亡くなられました
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自分の感受性くらい
ばさばさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて
気難かしくなってきたのを
友人のせいにするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか
苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし
初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった
駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄
自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ
倚りかからず
もはや
できあいの思想には倚りかかりたくない
もはや
できあいの宗教には倚りかかりたくない
もはや
できあいの学問には倚りかかりたくない
もはや
いかなる権威にも倚りかかりたくはない
ながく生きて
心底学んだのはそれぐらい
じぶんの耳目
じぶんの二本足のみで立っていて
なに不都合のことやある
よりかかるとすれば
それは
いすの背もたれだけ
茨木さんの代表作である。
恋歌
肉体をうしなった
あなたは一層 あなたになった
純粋な原酒(モルト)になって
一層わたしを酔わしめる
恋に肉体は不要なのかもしれない
獣めく
獣めく夜もあった
にんげんもまた獣なのねと
しみじみわかる夜もあった
シーツ新しくピンとは張ったって
寝室は 落ち葉かきよせ籠り居る
「恋歌」「獣めく」は「茨木のり子の家」(平凡社)の自筆原稿から。
メルマガのタイトル「清冽」は後藤正治さんが茨木さんを書かれたタイトル。
今回は後藤正治ノンフィクション集 第10巻からの引用。実は、その後に
「奇蹟の画家」が収録されている。
単行本、文庫本、全集とそれぞれに後書が違うのですね。
只々、有難いことです。
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2 展覧会から 黒川紳輝展 ブログ
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ギャラリーもパティオも不思議な空間となり、会期中もまた変転しています。
その魅力をスタッフがブログでご案内いたします。
http://gallery-shimada.com/blog/?p=9561
黒川紳輝 展
藤崎孝敏 展 「暁闇」コレクション+
どちらも19日(水)までです。
ご来廊おまちしております。
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3 今日の言葉
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絶望が虚妄なること まさに希望に相同じ
絶望といい希望といってもたかが知れている
うつろなることではふたつともたかが知れている
そんなものに足をとられず
淡々と生きて行け!
茨木のり子集 言の葉 ある一行 P97
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