■□■□2019年7月 Gallery SHIMADA & Art Support Center KOBE Info―1490号 7月14日

■□■□2019年7月
Gallery SHIMADA & Art Support Center KOBE Info―1490号 7月14日

              新聞記者

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1 蝙蝠日記  映画「新聞記者」が伝えること

2 今日の言葉  自由度ランキング 67位
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1 蝙蝠日記  私は聞き取れないのでは?
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と危惧しながら、でもこれは見逃せないと早くから席をとった。

東都新聞の記者・吉岡(シム・ウンギョン)は大学新設計画にまつわる極秘
情報の匿名FAXを受け取り、調査を始める。
日本人の父と韓国人の母を持ち、アメリカで育った吉岡はある思いから日本
の新聞社に在職していた。
かたや内閣情報調査室官僚の杉原(松坂桃李)は、国民に尽くすという信念
と、現実の任務の間で葛藤する。
私たちの眼前で起こったリアルとフィクションが重なりただならぬ緊迫感を
与える。

吉岡は杉原にまっすぐ「これでいいんですか。私たちは?」と問う。
立ちすくむ杉原。
この言葉は 私を今もとらえ続けている問いに重なる。

ゴッホ兄弟に纏わるもので、何度も書いてきた。
自殺したフィンセントがテオに書いた最後の手紙(投函されなかった)の末

……きみは現実に人間に対する愛をもって行動し、方針をきめうるとぼくは
思うが、しかしきみはどうしようというのか?
(ファン・ゴッホ書簡全集5 の最後 P1767)

テオはその半年後に亡くなった。

私の「絵に生きる 絵を生きる 5人の作家の力」(風来舎)のエピローグ。

フィンセントの「きみはどうしようというのか?」という問いかけは、絵画
や芸術にとどまらず、混迷する現代を生きる私たちへの根源的な問いかけで
ある。
「今を生きる」ということは、この問いに対する「答えを生きる」というこ
とにほかならない。

この映画で想起したもう一つの言葉は「一点の恥じることなきを」です。

序詩

いのち尽きる日まで天を仰ぎ

一点の恥じることなきを、、

木の葉をふるわす風にも

わたしはこころいためた

星をうたう心で

すべての死にゆくものを愛おしまねば

そしてわたしに与えられた道を

歩み行かねば。

今夜も星が風に身をさらす。 1941年11月20日

空と風と星の詩人 尹東柱(ユンドンジュ)評伝(藤原書店) P330

1946年2月16日 27才2ヶ月 獄中死。

「新聞記者」の設定と問いかけの背景の深さに粛然とする。

この映画に関わったすべての人に深い敬意を表します。

私は聴覚に問題を抱え、半分以上意味として聞き取れないままに何度か涙し
ました。
こうした事態のなかで苦しみ、そして自ら命を絶つのは誠実すぎる人たちで
す。

私は、もう一つ中学時代に大きな影響をうけた本を思った。

吉野源三郎「君たちはどう生きるか?」
マガジンハウスから羽賀翔一の漫画版と新装版が出版。
漫画版(マガジンハウス)が 2017年8月。
今回の原文復刻(マガジンハウス)も同じ時期に刊行。
吉野源三郎の日本少国民文庫(新潮社)への書下ろしは1937年。

国政選挙のこともあるが、今、私たちを取り巻くことへの違和感は、日々の
佇まいのなかで自ら表明し行動していくことでしか変えることは出来ない。

ともかく「新聞記者」を見て欲しい。そして行動へ。

この原稿を三日間、抱いている。

さて書き上げようと考えていて、自分自身の体験に及んだ。

その経緯を岩波新書397「神戸発 阪神大震災以後」(1995年6月20日刊)に
書いた。
すこし重なるものを感じる。

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2 今日の言葉
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国際NGO「国境なき記者団」(本部・パリ)は18日、2019年の「報道の自由
度ランキング」を発表した。
調査対象の180カ国・地域のうち、日本は前年と同じ67位だった。

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