■□■□2019年6月 Gallery SHIMADA & Art Support Center KOBE Info―1481号 6月11日

■□■□2019年6月
Gallery SHIMADA & Art Support Center KOBE Info―1481号 6月11日

              WHAT I AM DOING
   — 私の現代 山沢栄子–
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1 蝙蝠日記
   What I am doing 私の現代 山沢栄子 西宮市大谷記念美術館

2 今日の言葉 
   混沌としていて形にはなっていない「時代」と切り結んでいく
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1 蝙蝠日記  山沢栄子を見て
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あまり期待せずに出会って、思いがけずに心を惹かれることが起こることが
ある。
今回、ここに書くことが、まさにそれであり、心、昂った。

What I am doing 私の現代 山沢栄子 (西宮市大谷記念美術館)へ足を運び
ました。

私が見に行ったのは併催されている「津高和一コレクション展」を見ておき
たいと思ってのことでした。
津高さんの没後10年の時にブラジル・サンパウロから日本に作品が戻される
ことになりギャラリー島田が窓口となった。
津高さんの地元である大谷にも二作品を寄贈仲介させていただいた。
さすがに絶筆を含め見ごたえのある作品が並んでいた。

これは本題ではない。

写真家・山沢栄子については同じ大谷の津高和一生誕100年「架空通信展」の
記録に屡々名があることは記憶している。そして津高和一のポートレートは
ほとんどBy EIKO YAMAZAWAとある。
しかし切れのある色彩と大胆なフォルムによる抽象作品と経歴については初
めて知りとても印象深かった。

下記をご覧いただきたい。
http://otanimuseum.jp/exhibition_190525.html

そこで手にしたカタログは写真、評論、造本に至るまで鮮烈で圧倒された。
これ自身が素晴らしい作品である。
奥付をみてその理由を納得した。発行が「赤々舎」、発行人が姫野希美とあ
る。
池上司(当館学芸員)さんがアメリカに長期滞在されていたことは知ってい
たが、この調査に関わってのことだったことも納得した。

女性写真家のパイオニア山沢栄子の言葉を本書から引用しておく。

単身私は貨物船にのって生まれてはじめて海をわたった。
二十七歳の夏であった。
一個の人間としての意識がつよく、太平洋の波にむかっていろいろ気持ちを
話しかけた。

自然と語ることを覚えたのはこの時にはじまった。その時に私の中を満たし
ていたものは今も私の中に生きていることを感じる。(略)

しかし日本の国に私のような考えをもって生きてゆくのは、女性として無理
なことがたくさんありすぎるように思う。
しっかりとした精神と、私をたすけて下さった人たちなしには、決して私に
なることはできないことを今になってよく分かってきた。
私は小さいことでもいいから人の役にたちたい。芸術的意欲もそのためにほ
かならないのではなかろうか。(略)
人生の道はジグザグだが、ひとつの美しい目標に向かって行くのだと思う。
(略)
「婦人公論」41巻9号・1956年8月  本書P182 から

美しい毅然とした詩を上げておこう。
本書の最初と最後に引用されている詩です。

未知の世界につづく道

今日をたしかに歩む道

遠く

近く

一つの道

EIKO YAMAZAWA

「私の現代」(1986)

A Path

The path into the unknown

The path I walk today

Far

Near

A single path

Eiko Yamazawa

Abstrackt Photographs

この言葉が二度、引用されていることに強いメッセージを感じる。
そして私が感銘を受け、何度も反芻してきた姫野希美さんの言葉と重なる。

アートはお墨付きをもらった価値観ではありません。
しかし、人間の真実や、時代がはらんでいる問題を鋭敏に表現しようとする
行為です。
商売にならないどころか、排除される危機にも瀕(ひん)してしまう。
アートの垣根をなくして、多くの現代人に新たな感覚を体験して欲しいと願
っています。
ビジネスという枠組みからではなく、惹(ひ)かれるもの、必要なものとい
う視点から出発する仕事。
そこに挑み続けて生きたい。

本著で池上司さんが問うているのは
What I am doing であり What are you doing なのではないか。

この言葉は、私を律し続けてきたフィンセント・ファン・ゴッホの投函され
なかったテオにあてた最後の手紙「そしてきみはどうしようというのか」に
つながる。(注)

最後に
この展覧会の後援はNHK神戸支局です。
さて、営業政策上、指定管理先や後援事業などに忙しい新聞各社や美術雑誌
などがどう取り上げるのか。
この素晴らしい、刺激的な展覧会がどのように受け止められるか楽しみです。

(注)
きみは現実に人間に対する愛をもって行動し、方針を決めうるとぼくは思う
が、しかしきみはどうしようというのか?
(「ファン・ゴッホ書簡全集 5」みすず書房 P1767 の最後)

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2 今日の言葉
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アートとは何か。表現とは何か。それは、まだ混沌(こんとん)としていて
形にはなっていない「時代」と切り結んでいく作業だと思います。
私の仕事は声高にメッセージを掲げることではないのですが、ただ、アート
が背負う宿命、つまり時代がはらんでいる問題や新しい真実を提示する表現
を形にしなくてはならないと思っています。
私が今続けている写真出版は、私の中では仕事というより活動であると言え
るかもしれません。
もちろん自分の出版社を存続させていく努力は怠りませんが、若い写真家の
素晴らしい一冊の写真集が閉塞(へいそく)感に風穴を開ける
という実感は、責任を果たす喜びに近いものです。

姫野希美「赤々舎」発行人

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