■□■□ 2017年8月 Gallery SHIMADA & Art Support Center KOBE Info―1344号 8月15日

■□■□ 2017年8月
Gallery SHIMADA & Art Support Center KOBE Info―1344号 8月15日

        「これまで」と「これから」のあいだで
     「日本建築設計学会賞2016 作品集」を見て感じたこと

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蝙蝠日記
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私はほとんどFace Bookをやらない。読み書きは毎日長い時間をかけている。
ふとした時に島田陽のFBを見ると、「日本建築設計学会賞2016 作品集」の
写真があり、彼のことが載っているらしい。
そういえば受賞したことを聞いたことを想い出した。
しかし、その話はさらっと聞いた気がするけど、どんな賞かも知らない。
「その作品集見せて」と伝えると「あげるわ」。

日本建築設計学会賞の第1回の大賞を島田陽が受賞し、その意味や公開審査の
全ての発言、選ばれた理由まで知ることが出来て、とても興味深く、またい
ろいろと考えるところがあった。

身内話で申し訳ないですが、長くなりますが、読んでいただければ嬉しいで
す。


「日本建築設計学会賞は現代における建築的思考の、さらに言えば建築とい
う思想のありかたを見定めたいという野望をもってはじめられた賞である。
建築が、その行為と論理と方法と欲望を通して、すなわち思想を通して、ど
のように構想されてきたのか、実現されてゆくのか。選ばれた作品群はこれ
らの時代的証言者となっていくはずである。
(巻頭文「思想としての建築」竹山聖)


大賞決定公開審査ディスカッションから
「世界の見方を変える、プロジェクトとしての建築設計」からの引用
・この賞は今回、初めて設けられたもので第1回となる。
・今回の審査は「日本建築設計学会賞」とは何かという顔をつくっていかな
ければならない。「現在とは何か」を問いながら大賞を選びだしていく賞だ
ととらえています。
・プロジェクトとは「私が世界を変えること」であり、プラクティスは「世
界が私を変えることである。(ピーター・アイゼンマン)
歴史に残る建築家はプロジェクトを行っている。
・(選ばれた建築家が)どういった世界観をもち、どんな世界像、設計像を
持っているのかを議論の中で浮彫にしながら選んでいく。


島田陽のこの本の冒頭にある受賞作《石切の住居》への言葉から
「誤読と愛」
どのような敷地であっても、その建築が敷地の範囲を超えて地域の隠された
魅力を気づかせ、再編するようなありかたをいつも探している。

誤読を恐れず、一旦距離をおいて再解釈することによって、その土地の無名
の知性の歴史につながることが出来る建築が創造できるのではないか。

建築をつくるということは、建築の歴史、そして敷地における「これまで」
と「これから」のあいだで行われるものだ。

変化を許容できるユニバーサルスペースとしたり、前もって予想される変化
に備えたりするのではなく、新しい使い方を開発するきっかけとなる自律性
が建築には備わっているべきだと思う。


審査員の皆さんの言葉から
「世界を変える」。
その建築に触れることで世界の見え方が変わるというところでしょう。
島田さんの「積極的に誤読する」という言葉が印象的。
島田さんの作品を見ることで、周りの風景が違ってみえるという体験ができ
る。
建築を通じて世界の見え方を変えられるんだなと感じます。(五十嵐太郎)

島田さんの住宅が示したものは、土地に潜在している価値みたいなものをあ
の住宅がたつことによって再認識させるような、価値の創造があったんじゃ
ないか。(古谷誠章)

島田さんの作品はまさに「周囲を愛している」と感じました。(竹山聖)

島田さんの作品が周辺の条件をポジティブに再編しているというのに加えて、
住宅を古典的なものと考えず、リノベーションの途中にあるものだという考
え方をされているのも良いと思いました。(倉方俊輔)


最後に五十嵐太郎氏のテキスト「ありえたかもしれないポストモダン」から
「周りの家の雰囲気を反映しつつ、多様な要素を再構成するのが《石切の住
居》である。一つの住居を通じて建築の歴を想起させるプロジェクトである。
新築でありながらすでに長い年月を経て、幾度かのリノベーションが施され
た建築にも見えるかもしれない。そして知的なデザインを試みた《石切の住
居》を通じて、ポストモダンの歴史を想い返すとき、このデザインはその進
化形のようにも思われる。すなわち、ありえたかもしれないポストモダンを
想像させる建築だ。
(P10, 11からの抜き書き)

http://www.adan.or.jp/news/topics/635
http://www.store.adan.or.jp/items/7565619

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蝙蝠から
《北野町の住居》(2008年)に住んでいる。この風変わりな住居が出来たと
きに、ここに出て来るコンセプトの説明と同じ趣意を聞いた気がする。
島田陽は2013年に第29回吉岡賞(新建築賞)という歴代に錚々たる受賞者が
並ぶ賞を受けている。
東京国立近代美術館で開催中の「日本の家 1945年以降の建築と暮らし」に
も選ばれています。(10月29日まで)
http://www.momat.go.jp/am/exhibition/the-japanese-house/

今回、ここに取り上げたのは島田陽の建築思想の中に私の思想と同質のもの
を感じたからです。ほとんど語り合ったことはないのですが。

「世界の見方を変える、プロジェクト」と言う考えは、私がずっと取り組ん
できたことと通底していると感じます。

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