■□■□ 2017年6月 Gallery SHIMADA & Art Support Center KOBE Info―1325号 6月3日

■□■□ 2017年6月
Gallery SHIMADA & Art Support Center KOBE Info―1325号 6月3日 
 
              未知との遭遇  

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1 蝙蝠日記   『抽象の力』

2 展覧会案内  根木悟展    今日から
         松岡美子展   お見逃しなく
3 今日の言葉
大きな展開=先行世代からの断絶は漱石の存在なしには説明できない。
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1 蝙蝠日記   抽象の力
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川西英に「交響樂」という色彩デッサンが残されていてそれはカンディンス
キーの「印象派(コンサート)」(1991年)の引き写しに見える。二十歳を
出たばかりの大正3年(1915年)、湊川神社近くの相生橋西詰にあったカフェ
・ブラジルでの川西の初個展だった。
カンディンスキーは調性音楽を脱し、無調による十二音技法を創始したアー
ノルド・シェーンベルグの音楽との出会いにより20世紀近代絵画において決
定的な一歩を踏み出す抽象絵画への扉を開けたといわれる。そしてその後、
純粋抽象としての「コンポジション」が生み出されていく。では川西は世界
的にもまだ未知といってもいい前衛芸術を知り、また描いたのだろうか。

6月11日まで豊田市美術館で開催されている岡崎乾二郎の認識―『抽象の力
―現実(concrete)展開する、抽象芸術の系譜』(豊田市美術館)は、川西
英を通じて考えてきた
日本の抽象画の嚆矢である恩地孝四郎との交流などを一気に世界同時軸で読
み解いていて
かつ、画家ではなく夏目漱石の論考が文学のみならず美術の世界においても
革新をもたらしたことを知り、心底、興奮した。

川西英は竹久夢二との深い交流に鍵があり、1920年代の抽象主義とか表現主
義といった「前衛」芸術の動きに強い関心を持っていて、カンディンスキー
が所属していたドイツの芸術グループ「青騎士」が出した唯一の芸術雑誌も
持っていた。近くに住む竹久夢二に感化されてカンディンスキーを知り、そ
の影響によって抽象表現へと向かった恩地孝四郎(創作版画)もまた川西に
未発表の試し刷りを送り、版画家としての高次な意見を求めたり、作品を交
換するなど深く交流している。
1921年欧州大戦後のベルリンでダダイズムや構成主義に触れ、帰国後 前衛
芸術集団「マヴォMAVO」を結成、わが国の1920年代「前衛」活動の中心人物
であった村山知義の貴重なリノカット(lino-cut)の作品も川西のコレクショ
ンにある。
この「マヴォMAVO」も豊田展で触れられている。

私の川西英を巡る文は「KAWANISHI DESIGN WORKS -川西英が手がけたデザイ
ンの仕事」(シーズ・プランニング・神戸市広報課)に「井のなかの蛙が見
上げたもの」(P38)として書いたものから引いています。

Gallery INFORMATION 7月号では『抽象の力』展への季村敏夫(詩人)の論
考を掲載いたします。

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2 展覧会案内 
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根木悟展  今日から  6月8日まで
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これは1つの、抽象絵画の理想だと思う。「さらに加えれば、たった一本の
描かれた線が、あらゆる社会的 ーー 道徳的な意識をもった芸術にもまして、
より人類のためになり、魂を高揚させ、人間の心にひびき、人間を変革させ
ることができるのだ。純粋なただの形、色、調子、動きの中に、滲み出る魂
の美しさがある。人間はいつもそれを知っているのだが、つい忘れ、また思
い出す。」リトアニアの映画監督ジョナス・メカスの言葉である。そんな絵
が描けたらと、いつも考えている。
(根木悟)

美しい展示になりました。上の言葉を心に留めながら根木さんの世界をお楽
しみ下さい。
http://gallery-shimada.com/?p=4447

美しい光を孕んだ空間ですね。
http://gallery-shimada.com/blog/

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3 今日の言葉
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1903年にロンドンから帰国し、数年後には発表されはじめた夏目漱石の仕事
は、若い芸術家たちの芸術理解を大きく変更するほどの影響力を持った。漱
石の理論に触れた第一世代である津田青楓、坂本繁二郎、青木繁という世代
が示した大きな展開=先行世代からの断絶は漱石の存在なしには説明できな
い。そのなかでも漱石の理論にもっとも本質的な影響を受けたと思われるの
は熊谷守一である。
(『抽象の力』展より)

◆●◆蝙蝠から
私の守一は「独楽」(藤森武)の飄々たる世界でした。
そこに至る道は「未知」との遭遇でした。

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