□■□2016年8月
Gallery SHIMADA & Art Support Center KOBE
Info―1238号 8月15日
何かに護られ、何かを託されて
(その4)
1 蝙蝠日記 虹のキャラバンサライ 創造する人間の旅
2 今日の言葉 でも、残りの人生をもっと面白くしたい」
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■■蝙蝠日記 愛知トリエンナーレへ
翌朝、まだ迷っていた。
フクシマか石巻か。
東京か
一挙に神戸に帰ってしまうか。
そこでゆっくりと温泉にでも行って、美味しいものでも食べてという選択枝が僕には
ない。
とりあえず東京まで。グリーン車しかない。
車中、つらつら、ぐずぐず考えた。
東京乗り換え、すぐに名古屋へ。
第3回となる、あいちトリエンナーレへ向かった。
体を酷使せずに、ゆったりと見よう。見残しはまたくればいい。
なにごとであれ五感で感じることが大切です。いつかそれらが繋がって自分のものと
なってくる。そのことを大切にしています。
前回2013年の芸術監督は五十嵐太郎さんで加川プロジェクト2015にお招きしました。
今回2016年の芸術監督は港千尋さん。
総合テーマは「虹のキャラバンサライ 創造する人間の旅」
http://aichitriennale.jp/
キャラバンといえば私などはすぐ「月の砂漠」の哀愁を帯びたメロディ―が浮かびます。
そしてサライはその野営地。ここでは「次なる未知への旅への英気を養う家」です。
港千尋さんとは知らぬ仲ではありません。
ギャラリー 島田の神戸塾のサロンに季村敏夫(詩人)さんとのコラボレーションを確か、二
度させていただいた港大尋(音楽家・文筆家)さんのお兄さんです。
そして、何か恨みがましい気持ちもあるのです。
それは2007年のことです。
毎年、家人と海外への最後の旅がイタリアで、ヴェローナで野外オペラ「アイーダ」を観て
第52回ヴェネツィア・ビエンナーレへ向かいました。その時に家人は体調に異変を生じて
いたのですが、港さんへの気持ちとは関係ありません。
その時の日本館「わたしたちの過去に、未来はあるのか」のプロデューサーが港千尋さんで
そこでとりあげられていたのが岡部昌生さんで、前々号で広島現代美術館で作品に出会った
ことは書きました。
その恨みがましい気持ちとは
その時は、私の3回目となるヴェネツィア・ビエンナーレでしたが、2007年には我が友、榎
忠さんを椹木野衣(美術評論家)さんが推して日本館の有力候補だったのですが、最後は岡
部昌生に決まったのでした。
物の表面に紙をあて、鉛筆などで表面の凹凸を写し取るフロッタージュ(擦り出し)という手
法で記憶や歴史を紙に写し取り、作品として発表しています。たしか、この時も被爆したヒロ
シマの駅のホームかなにかだったように記憶していますが。
現地、日本館で見た印象は、大変、地味で、その歴史や場所や痕跡への膨大な補足理解がなけ
れば、これは理解できないだろうな、と感じ、ここに榎忠さんを出したかったと切に思ったの
でした。
これが私の恨みの正体です。
■
港千尋さんはここでも岡部昌生を中心においているように見えました。主会場の県立美術館で
も名古屋市立美術館でも長者町会場でも岡部さんのフロッタージュが大きく扱われていました。
まだ見ていませんが豊橋会場でも。
岡部さんは歴史の証言としてのフロッタージュでヒロシマとフクシマを被爆の記憶という主題
で繋ぎ、戦争の痕跡として沖縄と繋がる。そのライフワークとしての壮大さには敬意を払いま
すが、さて個別作品から歴史を読みとるのはなかなか難しいですね。
そんなことを考えながら見ていて、あっと声を上げそうになりました。
昨日、加川広重さんの「飯館村」を見てきたところですし、2012年、加川さんと出会った年
に一人で静まりかえった飯舘にいきました。
岡部さんの何十枚もあるフクシマ原発の「被爆樹木」のシリーズに見いっていたら、釘付けに
なりました
「被爆つづける樹」飯館村山津見神社のケヤキの大樹。とありその日の空間線量が記録され、
なんと
立会人 川延安直さん 小林めぐみさん とあるではないか。
このお二人は福島県立博物館(館長:赤坂憲雄)の学芸の方で2014、2015の加川広重プロジ
ェクトの計画では大変、お世話になった。いつも会津若松にある博物館から福島駅前まで長い
時間をかけて駆けつけ、終電まで相談に乗って下さった。
■
長者町会場では「邂逅する北海道/沖縄 交わる水」異文化との交わりを北海道出身の岡部昌生
が沖縄伊江島を沖縄出身のミヤギフトシが北海道を起点に、二人が交流しながら異文化との受
容と摩擦をインスタレーション作品としている。
しかし、その壮大なテーマ自身について、これでは成功しているとは言えないだろう。
ここで親しくしている佐喜眞美術館と畏友、真喜志好一さんが紹介されていた。
長々と書いてきて
まったくあいちトリエンナーレそのものに触れていない。
まだ半分くらいしか見ていないし、書く時間もない。
またの機会に。
岡部千尋さんのプロデュースは理念的でそのキャラバンは無数の方向から集まってくる。
そしてトリエンナーレという仮の停泊地から、また旅立っていく。
その荷は新しい文明文化のカタログのように「虹」に輝いている。
でもそこはまだ入り口(見本)に過ぎない。
そんな気がした。
■■ 今日の言葉
単体の絵は、描き上がったときに、もう完結しているんですよ。
絵がすきやから描くんやけど額にいれて展覧会やってお客さんに見てもらい、売れてなんぼ。
ぼくはそれで生計をたてているから。
でもそれは表現の一つの手段になっている。
お客さんが展覧会に来て、ぼくといろんなことを喋る。
同じ時間は二度とない。
今ここにいる人も、会うことはもうないだろうし、このときしかない空間にぼくはいる。
それを大切にすることと、人をつなげる手段。
それがぼくにとっての絵であり、ポトなんやね」(ポト=インド絵巻物)
これから痛くなったり苦しくなって、もう無駄口もたたけなくなるやろうけど、無駄口をた
たける間はたたくし、絵を描ける間は描くし、生きれる間は生きる。
高杉普作辞世の句「おもしろきこともなきよをおもしろく すみなすものはこころなりけり」
をもじって「おもしろきこのよをもっとおもしろく すみなすものはこころなりけり」。
これで行きたい。ぼくが生きてきた時代は物がなかった時代もあったし、高度成長で者が溢れ
たこともあったし、情報過多になることもあった。そうした時代を生きられたのは面白かった
とぼくは思っているし、決して悪い時代ではなかったと思う。
でも、残りの人生をもっと面白くしたい」東野健一
健康保険組合連合会 月間「健康保険」2016年4月号、5月号、6月号
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