Gallery SHIMADA & Art Support Center KOBE   Info―1187号  2月28日 

□■□2016年2月
Gallery SHIMADA & Art Support Center KOBE
  Info―1187号  2月28日  
         1990年の今日に
1  蝙蝠日記  再現不可能な人生の泡沫のドラマ
2  今日の言葉 
一人の死は縁ある多くの人々の心につきささった鋭い鏃(やじり)ともなるのです

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蝙蝠日記  死んでお詫びをする
1990年2月28日。
私より6歳年長。小児歯科専門医で小劇場「シアター・ポシェット」を北野の自邸に建て
解放。脳障害児治療の開拓者グレン・ノーマン博士の人間能力開発研究所ジャパンオフィ
スの理事を務められた佐本進さんが患者の男児が治療中に急死したことから「死んでお詫
びをする」との遺書を残して自殺。

胸騒ぎがして一昨日、朝早くに同じ北野町2丁目にある「シアター・ポシェット」を見に
行ってきました。取り壊される夢でしたが33年になる劇場は、いささかくたびれた姿では
ありましたが朝の冷気のなかに佇んでいました。
いまだに維持されているご遺族に思いを馳せました。

佐本進さんは私の心の師で、神戸の文化の土壌を豊かにすることを夢見る伴走者でした。
佐本さんの遺稿集「天の劇場から」(風来舎)に1983年から亡くなられる前日までの劇場
の全記録(吉田義武編)掲載を添えて刊行し、私は「佐本先生を巡る旅の終りと始まり」
を編集後記に代えて書いています。
出版は伊原秀夫さんが、詳細な記録は吉田義武さんが。「佐本メモリアル実行委員会事務
局長」としての私を前に立てたもので、この本に内実を与えたのはお二人の力です。

遺稿集「天の劇場から」(風来舎)は数冊しかないので、貸し出しとさせていただきます。
ギャラリー島田にお申し出下さい。是非、お読み下さい。
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ともあれ十年は再現不可能な人生の泡沫のドラマの一瞬。
 やりたかったこと、できなかったこと、苦しんだ時間、笑った一時、出会った人たち、
去っていった人。悔恨と悲哀、不安と期待、ささやかな喜び、やるせない悲しみ、それら
が満遍なく均等に混じり合い押しつまった、途方もなく長く短かかったこの日々の行程。
その四千日の一節はどこから折りとっても顔をのぞかせる、かの縁日の懐かしい金太郎飴。
折っても折っても出てくる甘さとほろ苦さ、後悔と反省、希望と幻影。それらのすべてに、
どうやら今、ぼくは一人で責任を負わねばならないようである。その苦味や失敗や責めの
日々でさえ誰のものでもなく、ぼくの分にふさわしいものだったと、ようやく今ではっき
りと、ぼく自身に思えてくるからである。
(1972年、三宮に関西初の小児歯科専門医院を開いてからの10年にあたって)
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 明確な記憶にないずっと以前から、ぼくの心は、いわれなく、
ひたむきに「弱きもの」に対して魅せられ続けてきたようである。
弱者に対する、たとえようのない共感、愛着心、親近感。
それは、多分にぼくの理念ではなく、思想や信条でもなく、
おそらくは拭い去ることのできないぼく自身のしからしめる
所以なのかもしれない。
多分に強者になりえないという、自分自身の実感と、
虚構や覇者を排すべきであるという明確な自覚は、
今なお、ぼくを暖めつづける体温そのものであり、
かっていささかの苦渋と挫折に色どられた春の日の体感に由来する陰影が、
今日、なお執拗にぼく自身をドン=キホーテさながらに理由なく困難な状況へと
立ち向かわせているようである。 佐本進「わが心のシノプシス」(注)
(注)シノプシス=概要、あらすじ
上記の二つの文は「天の劇場から」のP130−134からの引用です。

かきおくも夢のうちなるしるしかなさめてはさらにとふ人もなし(一休)

私たち、とりわけ私には佐本進さんを失ったのは痛恨です。
でも上記の言葉を思うと佐本さんが自死を選んだことが避けえぬことであったのですね。
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今日の言葉
「いのち一つ消えるということは、一人の死にとどまることを意味しません。死者を忘れ
かけている人々の心の傷は、時とともに癒えるかにみえながら、また新しい傷口となって
血を流しつづけ、一人の死は縁ある多くの人々の心につきささった鋭い鏃(やじり)とも
なるのです」
澤地久枝「いのちの重さー声なき民の昭和史」より 岩波ブックレット126
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