Gallery SHIMADA & Art Support Center KOBE   Info―1151号

□■□2015年10月
Gallery SHIMADA & Art Support Center KOBE
  Info―1151号
      
            膝で歩く 
              
1 蝙蝠日記   石原吉郎を読みながら考える
2 今日の言葉  一瞬に一生をかけることもある

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蝙蝠日記  
膝で歩くとはどうゆう状況か。
昨年、書肆山田から刊行された、畏友、季村敏夫の詩集の題である。
戦後、シベリアの強制収容所で重労働を強いられた抑留体験をもつ石原吉郎によっている。
季村さんから「膝で歩く」ことは教わっていた。そして細見和之さんが「石原吉郎―シベ
リア抑留詩人の生と詩」(中央公論新社)を上梓し、それを季村さんが神戸新聞の「ひょう
ご選書」で「抑留8年の強制労働。運の悪い男、不幸な人間とされ、じっとたえ、そのこ
とで受けた傷。だが石原が背負う傷は、ある瞬間、ある崇高さを生みだす」と書いていま
す。
季村の評は、詩人の評にとどまらず、今の社会政治的な状況を関っての論及です。

季村さんの「膝で歩く」の部分から

どこにひきかえすのか抑留され
凍ったトチにつながれたどの兵士も
足のうらは役にたたず
肘と膝がしらで這う姿勢で
身を保つしかなかった
二足歩行をいまだに信じている精神よ
膝を組みかえてみよ
それだけで一変する思考がある
シベリア強制収容所から生還した詩人は
足のうらと地面との
わずかなすき間に
悔恨の杭をうちこみながら語った
▲▲                       
今朝、これを書こうと思ったのは石原が1959年の10月27日(56年前の今日)の
「シベリア・ノート」に下記の言葉を見つけたからです。
 シベリアでどのような限界状況にいたかということはこの際問題ではない。またその際
何を考えていたということも今となっては問題ではない。問題は、現在の私自身が、シベ
リアの経験を「どう受け止めているか」ということである。「石原吉郎」P243
▲▲
しばしば季村敏夫さんから剛直球のような紙礫(かみつぶて)が飛んでくる。詩や文学の
分野での厳しい切磋琢磨は緊張を孕み、曖昧さを許さない。だからこそ厳しい峻別のうえ
に残されるのが確かなものとして在る。
▲▲
読みながら、ずっと念頭にあったのが同じ抑留を経験した香月泰男のことでした。
香月は抑留2年を経て1947年帰国。シベリアシリーズは50年代に始まり60年〜70年代
と描き続けられました。
石原は戦争犯罪人として8年の抑留をへて1953年帰国。
しかし石原を待ち受けていたのは、強制収容所でのなまの体験は、ほとんど問題ではない
といえる過酷な現実だったのでした。 「石原吉郎」P174
どちらも帰国してからシベリア体験を作品化するまでに時間を経ます。そして紡ぎだされ
たもの。その違いが見えます。
私がギャラリーとして紹介した、同じ戦争体験を描いた坂本正直さんのことも忘れること
はできません。
http://www.gallery-shimada.com/01/schedule/exhibition/sakamoto_1305.html ▲▲
重い深夜の読書から目覚めれば青天の朝でした。
ベッドで新聞を広げるといつも真っ先に読む鷲田清一さんの「折々のことば」が
香月泰男だったのに驚きました。
そしてTOP記事は拘留20年の青木恵子さんと朴龍晧さんの釈放でした。
■■今日の言葉
一瞬に一生をかけることもある。
一生が一瞬に思える時があるだろう。
香月泰男 展覧会図録「<私>の地球」から
蝙蝠から
その図録を手にしながら二人の作家のことを考えています。
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