□■□2015年8月
Gallery SHIMADA & Art Support Center KOBE
Info―1125号
託された重みに押しつぶされそうになりながら
1 蝙蝠日記 居場所を求めて
2 今日の言葉
「時間」というものを意識して、そのための遺書を描きはじめた
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蝙蝠日記 それぞれの思いを抱きながら
鴨居玲展がはじまって三日。落ちついた中にも多くの方が熱心にご覧いただいています。
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私には、長年にわたって託されてきた宿題に答えを書く苦しみにうなされる思いでした。
没後30年の鴨居さんの展覧会が神戸では開かれないことに気がついて、私に託された人々
の想いが、どっと押し寄せてきて息苦しくなってしまいました。
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まずは「遺書」といっても未遂でしたので「らしきもの」ですが乱れた文字、破れた紙に
尋常でない切迫感が迫ります。H医師(故人)から託され、しばらく抱えていましたが石
川県立美術館へ寄贈。そちらでの公開を経て、今回、神戸でははじめての公開となります。
今回、皆様の協力をいただいて読み解きを進めています。
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「切り裂かれたカンバス」。50号の大作「教会」はナイフで切り裂かれています。
鴨居さんに可愛がられた榎忠さんの目の前で完成半ばの絵を切り裂いたのですが、その
経緯は会場でご覧下さい。
榎さんから私に託されていたのですが、鴨居さんが中学時代に在籍していた関西学院へ
寄贈したのもを、今回お借りしています。
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岩島雅彦「芸人の一家」(200号)
バルデペニアスに鴨居が借りていたアトリエに半年暮らし、その後のパリでも、神戸でも最も
気の許せる友であり続け、鴨居さんの自殺未遂事件にも何度も立ち会うこととなる。
居宅も目と鼻の先といってもいい。悲劇の当日にも・・・
この作品は岩島さんのギャラリー島田での個展(2006年)で展示し、私に託されたもの。
ドン・キホーテとサンチョ・パンサのような二人を、ここでなんとしても再会させてあげたい
という一心で工夫をして展示しました。
この展示を期に、公的な場に収蔵され可能性が出てきました。
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鴨居玲さんのパレット、イーゼル、衣装、初公開の小品、友人に当てた自筆の手紙などな
ど。それぞれが発する想いが交錯して、準備をする夏休みは、しばしば夢にまでうなされ
ていました。
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鴨居さん縁(ゆかり)の作家たち。
鴨居玲の友人、伊藤誠(元・姫路市立美術館長)がゴッホとゴーガンに比した、ブラジル
在住の若林和男さんの初期作品、若き日の榎忠さんの大作に鴨居さんが額縁を贈った作品
など。鴨居羊子、西村功、知念正文、小西保文、中西勝、徳永卓麿など。
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小さな展覧会ですが、様々な思いの交差する空間です。
どうかゆっくりと、その思いに委ねるようにお過ごし下さい。
「託された思い」にもっともふさわしい居場所を与えたいと強く願った、私や苦労を担っ
たスタッフたちが書いた答えを一人でも多くの方が、少しでも長い時をここで過ごして
読み取って下さることを願っています。
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今日の言葉
「影」と「時間」
影というものに対する解釈は種々あるでしょう。
影を描くのに光を描いたレンブラント。
過ぎ去った時間を描いたアメリカの国吉。
どちらかといえば、私もある種の影を描く人間でしょう。
「時間」と言えば、それは極めて能動的で、そしてそれは。決して、時が流れ去っていく、
と言う様な抒情的なものではなく、人間を最後の最後まで、無に帰するまで、追いかけて
来る、まるでガンの病原菌のようなものと、私にはおもえます。
私の仕事が多少でも、世の中にアピールする事の原因があるとすれば、此の追いかけてく
る「時間」というものを意識して、そのための遺書を描きはじめたからかも知れません。
鴨居玲(1975年パリにて)
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