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■□■□2019年12月 Gallery SHIMADA & Art Support Center KOBE Info―1524号 12月23日

■□■□2019年12月
Gallery SHIMADA & Art Support Center KOBE Info―1524号 12月23日

              いのちを刻む

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1 蝙蝠日記  「日々、われらの日々 〜鉛筆画家木下晋、妻を描く〜」

2 今日の言葉   らいは親が望んだ病でもなく
          お前が頼んだ病気でもない
          らいは天が与えたお前の職だ
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1 蝙蝠日記  木下晋展 ―いのちを刻む
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昨夜の木下晋さんの
ETV特集「日々、われらの日々 〜鉛筆画家 木下晋、妻を描く〜」
とてもいい内容でしたね。

厳しい闘病を辿りながら、その姿を描く日常・・・・
私は、奥様も娘さんも、二十数年前から存じ上げているので、とりわけ深く
心に届くものがありました。
お見逃しの皆さまへ是非とも再放送でご覧ください。

鉛筆画家木下晋(72)「最後の瞽女(ごぜ)」と呼ばれた小林ハルさんやハ
ンセン病患者で詩人の桜井哲夫さんなど、障害や病を抱えながらも懸命に生
きる人々を鉛筆で描いてきた。
そして今取り組んでいるのがパーキンソン病に苦しむ妻君子(70)の姿だ。
木下は、痛みと闘う妻を見つめながら、そこに「生命の輝き」を見出す。
一方で自分の奥底に抱えてきた「心の闇」に突き当たる。創作と介護の中で
葛藤する老夫婦の日々を描く。

再放送は
12月26日(木)午前0時から午前1時
https://www4.nhk.or.jp/etv21c/2/

::::::木下晋との出会い

1989年に出会い作品にも作家にも衝撃をうけ、足跡を辿るように紹介してき
た。
当ギャラリーでの木下晋展は次の通りです。
1991年初めての個展、以来 93、95、97、98、2001、02、05、08、13と10回
を数える。
多くのコレクターへと作品を渡してきた。そして、画家と過度に密着するこ
とを好まない私だが、何故か木下さんとは、一緒に旅をしたり遠方まで脚を
伸ばしたものだ。

佐喜眞美術館(沖縄)久万美術館(愛媛)池田20世紀美術館(静岡)信濃デ
ッサン館(長野)熊本市現代美術館(熊本)湯殿山・注連寺(山形)直島
(岡山)平塚市美術館(神奈川)福岡市立美術館 湯布院空想の森美術館
(大分)森美術館(東京)宮城県立美術館、梅野絵画記念館(長野)などが
すぐ浮かぶがまだまだあった気がする。

:::::松永伍一(詩人)は

「ものを見るまなざしは、人それぞれ一様ではない。しかも、描かれた手の
陰影は、どことなく自然ではない。彼の作品では細かい部分を過剰に描き込
むという作為をとるがそう描くことでしか見えてこないように描きとめられ
る。それは、ものの見方について彼なりの偏りがなせる業(わざ)である。
ひたすら人間の本質を見据え、その照り返しとして、いま生きている自分が
同じく生きている他者との間の生命の紐帯を自覚し、そして地上からいずれ
は消えていく者との間に共時態=synchronieをつくり出したその証しを表現
してきたのである」と書く。

   自分にとっていちばん大事なことは、
   その人間を知っていくということで、
   絵を描くことではないと思っている。

::::その歩み

 木下晋は1947年富山市生まれ。町田市在住。中学時代、木内克に塑像を学
び、独学で油彩やクレヨン画を手がけ、16才の時、画家の麻生三郎、詩人の
滝口修造に出会い、以降交流を深めた。
1973年から洲之内徹の現代画廊などで個展を開き、1982年渡米から帰国後、
鉛筆画を始める。ライフワークとなった「瞽女(ごぜ)」の小林ハル(故人、
人間国宝)、流浪癖のあった母親、谷崎潤一郎の「痴人の愛」のモデル和嶋
せい、海文堂ギャラリーでの初個展で出会った、写真家・中山岩太夫人の中
山正子。そして絵本「ハルばあちゃんの手」のモデルとなった川端さんご夫
妻。そしてハンセン病元患者桜井哲夫さんたちの、それぞれの72万時間を超
える人生の日々を、
10Hから10Bの22種類の鉛筆で、その時間と等価であることを願うがごとく、
そして修行のような接触を重ねる。

モデルが長い年月をかけて培ってきた年輪、皺の中に刻まれている人生、人
間という不可思議な存在の心の闇の部分、生きざまという見えないものまで
表現したいと迫ります。
一呼吸の間に十数回も。刻むようにというのも違う、人肌を優しく撫でるよ
うに。漆黒ですら、無数の重ねることに深まっていく。老いですら皺ですら
崩れ爛れた皮膚ですら、怒りにより尖ることはない。

その人の生に寄り添い、敬い、同化するまで何十万もの肌への触れ合いは、
木下の内部を浄化し、祈りとして立ち上がる。
絵を書くとういことを越えて、木下晋の目と、魂の修練の形を通じて私たち
は「人」としての尊厳を知る。
余りに希薄になってしまった「存在」が、見る人のうちに甦らすものがある。

木下晋の作品を、細部を緻密に描き込むことをもって、写実的なリアリズム
を趣旨としているとは思わない。
彼の作品の理解者、窪島誠一郎氏が《非リアリズム》と規定し、《表現主義
的ともいえる画家のエゴイズムの滾り》と指摘したように、彼の作品は過剰
な何ものかをメッセージとして発している。

◎◎◎
アーチストトーク 「木下晋に聞く」も予定しています。
2020年1月11日(土)15:00から
聞き手:島田誠  要予約・無料 

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2 今日の言葉
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天の職
お握りとのし烏賊と林檎を包んだ唐草模様の紺風呂敷を
しっかりと首に結んでくれた
親父は拳っで涙を拭い低い声で話してくれた
らいは親が望んだ病でもなく
お前が頼んだ病気でもない
らいは天が与えたお前の職だ
長い長い天の職を俺は素直に務めてきた
呪いながら厭いながらの長い職
今朝も雪の坂道を務めのために登りつづける
終りの日の喜びのために
     桜井哲夫 第一詩集「津軽の子守歌」より
    「いのちを刻む 木下晋」(藤原書店) P178

東日本大震災のあった2011年12月28日 桜井哲夫が87年の生涯を終えた。

●「いのちを刻む 鉛筆画の鬼才、木下晋自伝」(藤原書店)も時期を合わせ
て刊行されました。

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■□■□2019年12月 Gallery SHIMADA & Art Support Center KOBE Info―1523号 12月19日

■□■□2019年12月
Gallery SHIMADA & Art Support Center KOBE Info―1523号 12月19日

            長く 充実した一年でした
           皆様、ありがとうございました

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1 蝙蝠日記
   今年も大変、お世話になりました
   ギャラリー島田の年末、年始の予定などは下記でご覧ください
    http://gallery-shimada.com/blog/?p=9417 

   まだまだ、クリスマスや歳末 そして迎春と
   こころせわしい日々ですが
   是非にと、お知らせしたいことが・・・

   2020年 年初にお迎えする「木下晋展 ―いのちを刻む」について

2 展覧会へのお誘い  華道壮風会 現代生け花・現代美術展

3 今日の言葉  孤独に生きる人のことを知りたい
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1 蝙蝠日記  木下晋展 ―いのちを刻む
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2020年1月8日(水)から始まる注目の展覧会
「木下晋展 ―いのちを刻む」
http://gallery-shimada.com/?p=6668

展覧会に先駆けて是非ともご覧いただきたくお知らせいたします。

●ETV特集「日々、われらの日々 〜鉛筆画家木下晋、妻を描く〜」
12月21日(土) 23:00−24:00 放送

●「いのちを刻む 鉛筆画の鬼才、木下晋自伝」(藤原書店)も時期を合わせ
て刊行されました。

作品を抱えてトンボ帰りでギャラリーを訪ねて下さった木下晋さんを
スタッフ(容)がブログでご紹介します。

http://gallery-shimada.com/blog/?p=9401

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2 展覧会へのお誘い
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華道壮風会 現代生け花・現代美術展
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華道の道である、生け花を通じて、自身においては独自性を尊重し、各人の
独創的な生け花作品確立を自由に個人の志向を選択して「自身独自の生け花
確立」に向け修練する。

12月21日(土)〜24日(火) 11:00〜18:00 (最終日は16:00まで)

華道壮風会については下記を
https://soufookai.wixsite.com/index

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3 今日の言葉
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孤独を描きたいわけでもない
なにかを伝えたいわけでもない
孤独に生きる人のことを知りたい

人は合掌して何かに祈るしかない。
身に降りかかった勘案辛苦を合掌で包み祈る。
それは鎮魂の思いを伝える人類普遍の姿であろう。
自分に出来ることは何かと考えたとき、
私は合掌の図を描いた。

木下晋

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■□■□2019年12月 Gallery SHIMADA & Art Support Center KOBE Info―1522号 12月15日

■□■□2019年12月
Gallery SHIMADA & Art Support Center KOBE Info―1522号 12月15日

    まったく違う世界なのに、見る人を 惹きつけて止まない

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1 蝙蝠日記

2 展覧会へのお誘い
  スタッフが二つの展覧会の魅力をご案内いたします。
  本日、17:00〜 作家トーク開催いたします

3 KOBE復興大2019へのお誘い
  本日、14:00〜 島田誠がお話いたします

4 今日の言葉
  知識人とは、もともといつでも、戦う前からすでに敗北しているもの
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1 蝙蝠日記
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まったく違う世界なのに、見る人を、それぞれに惹きつけて止まない。
このところ、そんな展覧会が続いています。
そうです。
思いがけない「出会い」や「発見」が。次々と。
そして、、ずっと賑わいが続いています。
ありがたいことです。

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2 展覧会へのお誘い
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井上よう子展 ―言葉がくれたもの―
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井上よう子の言葉と会場風景
http://gallery-shimada.com/?p=6570

スタッフ(松)がその魅力をご案内いたします。
http://gallery-shimada.com/blog/?p=9338

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桜井類 惑星の肉体的な魅力
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櫻井類の言葉と会場風景 
http://gallery-shimada.com/?p=6573

スタッフ(容)がその魅力をご案内いたします。
http://gallery-shimada.com/blog/?p=9336

本日12月15日(日)17:00から トークです。
中井浩史(画家)さんをお招きして、
櫻井類さんとのトークを開催いたします。
(参加無料、要予約)

是非、お待ちしています。

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3 KOBE復興大2019のお知らせ
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本日、島田誠が、KOBE復興大2019でお話いたします。

12月15日(日)14:00〜16:00

特別まちサロン/まちづくりラボ
復興まちづくりとアート ――アートはどのような役割を果たしたか

ゲスト:島田誠(アートエイド神戸)
    石田裕之(防災音楽ユニットBloom Works)

島田は、前半の1時間ほど、アートアイド神戸や被災者復興支援会議などの
お話をさせていただきます。
後半はシンガーソングライターの石田裕之さんが、東北や神戸での音楽を通
じた支援活動や防災音楽デュオのお話をされます。

参加無料、予約不要です。
ご興味ございましたら、ぜひご参加ください。

http://gallery-shimada.com/blog/?p=9390

そのあとは、
ギャラリー島田での 櫻井類×中井浩史 トークへご一緒しましょう!

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4 今日の言葉
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反体制活動でたびたび逮捕され、1989年の民主革命でチェコスロバキア
連邦大統領になった劇作家のハヴェルは、かつてこう語った。
「知識人とは、もともといつでも、戦う前からすでに敗北しているもの、永
遠なる敗北を宣告されたシジフォスのごときものであり、勝利している知識
人なんぞというものがうさんくさいのです」(『ハヴェル自伝』)

二つの世界に生きようとするものは、たえず居心地のわるい思いにさいなま
れる運命を逃れられない。 (須賀敦子)

運動は、それぞれ自分自身の孤独を確立したものによってのみ荷われるべき
ものだ。 (須賀敦子)

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■□■□2019年12月 Gallery SHIMADA & Art Support Center KOBE Info―1521号 12月7日

■□■□2019年12月
Gallery SHIMADA & Art Support Center KOBE Info―1521号 12月7日

           不思議なことが起こる
           二度、三度そして・・・  
               散華 
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1 蝙蝠日記  石井一男さん 須飼秀和さん
        奇蹟なのか 当たり前なのか

2 展覧会へのお誘い  井上よう子展 ―言葉がくれたもの―
            桜井類 惑星の肉体的な魅力 

3 今日の言葉
    花を散らしあう魂よ
    花はすでに 体を埋め尽くしていて
    もし 時満ちれば
    いつでも すべてを捧げ
    きっと
    たどり着くだろう
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1 蝙蝠日記  不思議なことが起こる
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石井一男さんと須飼秀和さん。
毎年、同じ時期に一緒に展覧会を。
そして、作品も熟度をましていく。それをしっかりと受け止める人、人。
今の時代にほんとによく買っていただくことに驚きます。
 
そういうと、先入観で、軽く見る、
「ふん」という声も聞こえてくる気がします。

石井さんは、もう30年に。須飼さんは15年に。
今日から始まった井上よう子さんは27年に。
着実に世界を広げ、深め、「描く」ことだけでここまで来た。
そのことに敬意を持っています。

石井さんの絵は、だれも「商品価値」として買う人はありません。
そうでないことを貫いています。そのことが分かっていて、なおかつ
いまだに、
ゆっくりと来られ、長くおられ、選ばれる。
「情熱」も「奇蹟」も、遠くなったいまもなお。
そのことに私たちも驚きます。
  

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2 展覧会案内
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井上よう子展 ―言葉がくれたもの―    12月7日(土)−18日(水)
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30年前に出会い、すでに画ける人だった。
そのころから青を基調にしていたが、誠実極まりない表現者としての深化を
伴走できたことはこの上ない喜びだ。
命あるものは必ず逝く。その哀切を抱きながら人は生きる。死や別離の降り
積もる体験が抒情を削ぎ落とし、近作では荘厳の気配に満ちながら射し落ち
る光が背筋を正す。
日常でも画作においても「生きること」を飽まず問い続ける姿勢は、恩師、
三尾公三の「完成度、インパクト、発想の斬新性、格調」の教えへのまっす
ぐな応答である。

作家の言葉は下記でどうぞ
http://gallery-shimada.com/?p=6570

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櫻井類 惑星の肉体的な魅力        12月7日(土)−18日(水)
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塩屋から須磨の一駅のあいだ、時間にすればほんの2,3分の移動ですが、窓
の外には海が開けていてそれをほぼ毎日見ています。
毎日見るというのは旅先の一度きりの出会いの景色とは違う、風景を風景と
して片付けられないというか。
季節や天候や時間によって変わる眺めは、だんだんと人格的なポーズや表情、
佇まい、立ち居振る舞い、衣服や肌理といったものに近いものに感じてきま
す。親しくなるんですね、分かってくるから新しいものも見えてくるという
感じ。

http://gallery-shimada.com/?p=6573

12月15日(日)17:00〜
アーティストトーク 櫻井類×中井浩史(画家) [要予約・無料]

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3 今日の言葉
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散華

いつまで
この沈黙に この近さと 遠さに
耐えられるのだろう
眼差しは わたしの胸に
ふりそそぐ ふりつもる
花びらを開く季節を
幾度も 繰り返して
ただひたすら
散る花となりながら
言葉が結ばれる時を
念じながら

あの時舞い散った
言葉にならない言葉は
燃えるような幻の花になり
それを覆っていった
夜の暗闇の中で 火花になって
生命は 慄きながら 躓きながら
やがて 跡形もなく―――
黄泉からの風に運ばれ
遠く遠く流れ渡って
本当に たどり着いたのだろうか
それぞれの星座まで

この広く深い宇宙の
この地で この樹の下で
花を散らしあう魂よ
花はすでに 体を埋め尽くしていて
もし 時満ちれば
いつでも すべてを捧げ
きっと
たどり着くだろう

井野口慧子

(誌と批評 アルケー No.20 2019年8月1日 から)

この詩を読んだとき井野口さんの遺詩を読んだ気がして手元にもっていた。

12月2日、智内威雄(左手のピアニスト)さんから訃報を聞いた。

智内威雄(KOBE ART AWARD大賞受賞者)は井野口さんのふるさと三次での
11月24日のコンサートのアンコールで、井野口さんが、どうしてもこの「散
華」を読みたいと言い、読んだという。
井野口慧子さんは同じ広島でアーサー・ビナードさんとも親しい。
ご冥福をお祈りいたします。

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