ギャラリーをやっていれば画商だろう、ギャラリストだろうと言われてもピンと来ない。

年間に50をこえる展覧会を開き200名近い作家が登場する。できるだけ丁寧に見、心を込めて接したいという思いは、年を追って強くなってきています。
年に20回近いサロンにしても同じことで、それぞれにしっかりした意味をもたせ、深いサロンでありたいと願っているのですが、そのことによってギャラリー島田そのものが「場」であることを超えて創造的発信装置になるようにしたい。それは作家さんや足を運ばれる皆さんとともにある、ともに生きていることを共感したいと願っています。
皆さんからみれば、私は美術のことよりも社会的な発言に偏っていると思われるかもしれません。しかし表現に関るものが、現代が抱えるさまざまな課題にどのように向き合っているのか、そしてどのように生きているのかは、とても大切なことだと思っています。

心の根底にある理想に近いイメージは、その人の心の深さであり、何ものにもかえられない。
このイメージに対してさらに心を動かし、何らかの形に表現するのが芸術である。
理想とするイメージを如何に妥協せず純粋に視覚化するか。
現在、人間社会は、効率や利便性の為、機械文明と情報に追われとどまるところを知らない。
芸術に出来ることは、心の根底にある理想を失わないことである。

松谷武判さんが今年の新年賀状に書かれていた言葉です。

心の根底にある理想がその人の質を定め、それは作品と等価なのです。そのために不断に努力し、思索し、かつ自分のものとして語り、そして行動にまで至らねばなりません。
真摯に努力し、歩む。私たちは、そのようでありたいと思います。そうした作家たちと共にあることはうれしいことです。

伊津野雄二展は作品集出版記念として東京、名古屋に続いて開催されましたが、その反響も結果も素晴らしいものでした。日常を大切に積み上げてきたことの揺るぎなさを感じました。
ギャラリー島田のメモリアルブックに書いてくださった、伊津野雄二さんによる「画廊主」の定義

絵かきの気づかない
絵のなかの たからものを
釣れるひと

そこまで、ユーモラスな挿絵ともに書かれていますが実は書かれていない続きがあります。

ただし、古来 成功例はまれ
多くは徒労に終わることが多い

はい。その通りですね。

海文堂生誕100年まつり「99+1」
大変な盛況のうちに終わりました。閉店の衝撃が社会的事件といった趣であっただけに、まだ余震が続いていました。このことが教える深い意味について考え続けています。
閉店を発表してからの二ヶ月間、最後まで、淡々と平静をたもって、日常の仕事を守り続けた福岡泰宏店長(当時)をはじめとする書店員のみなさんの姿勢には感動しました。そして小林良宣前店長も挨拶で「私たちは普通のことをやってきただけです」と言っていましたが、本を愛し、本を愛する人を愛するという普通のことが、普通ではないことなのです。小林さんは一言「普通でない人が一人いましたが」と笑いながらこちらを見たのでした。

万巻の書を読むに非(あら)ざるよりは、寧(いづく)んぞ千秋(せんしゅう)の人たるを得ん。
一己(いっこ)の労を軽んずるに非ざるよりは、寧んぞ兆民の安きを致すを得ん。

たくさんの本を読んで人間としての生き方を学ばない限り、後世に名を残せるような人になることはできない。
自分がやるべきことに努力を惜しむようでは、世の中の役に立つ人になることはできない。

このことは本に限ることではありません。広く文化に関り、生き方を問い続けること、それを体現したいと願い、皆さんと歩みます。

《ご報告》 会期中の来場者は約800名。記念ポストカードも約1700枚を販売しました。「海文堂の本」(平野義昌著)刊行のための美術作品の販売は、皆さまの協力のおかげで目標50万円の倍額100万円を達成、来春の刊行を目指します。

2014年前半を振り返れば
1月の「加川広重巨大絵画プロジェクト2014」が、その集大成というべき創造の場となりました。
「奥田善巳展」「木下佳通代展」はパートナーであった物故作家の展覧会でしたが、兵庫県立美術館での奥田善巳展と連動し、和歌山県立近代美術館へ大作や貴重な作品20数点が収蔵され、木下佳通代記念ギャラリー(*)が開設されました。
大作を集めた現代書家「石井誠展」(2月)は札幌の病院とネット中継で繋がり時空を超えた新しい感覚で作家と交流しました。
「没後10年岡野耕三展」「又木啓子展」もスペインのクエンカ長く暮らしていたパートナーによる展覧会、須飼秀和原画展も二つのフロアーを使っての展覧会でした。
植松永次(陶)さんの「泥」と毛利そよ香さんの「根」、?忠之さんの「造化自然」の写真は饗演し珠寶さんのお花が全てを繋ぎました。海外からは藤崎孝敏(フランス)、渡邊幹夫(フランス)、木村章子(フランス)、辻井潤子(シンガポール)さんをお招きしました。