私はポンピドゥー・センターを偏愛していた時期があります。(最近は行っていないので)
なぜ、私がフランスの3大美術館のうちポンピドゥーに最も惹かれるのだろうか。私たちは現代に生きている。20世紀の歴史についてはある程度理解しているし、私たちが抱えている文明的課題についても、ある程度共通の認識を持っている。それは現代芸術が提起する課題でもある。だから何の予備知識を持たなくても、率直に作品と向かい合うことで、理解不能という感じはしない。(現実には現代美術を理解不能と思っている人が多いが) だから、ここで20世紀の美術の歴史をたどりながら、20世紀を生きてきた自分の位置を確認し、大きなパースペクティブ(遠景・透視)のなかで作品を客観視することが出来る。だから、何度来ても、見飽きることなく興奮するのです。

 

美術館は生命を燃焼させるところだ

ポンピドゥーセンターは、これまでエリートが独占する芸術や文化の枠を破り、社会すべての人々に開かれた場を創造することが理念として謳われた。 初代館長はスェーデン・ストックホルム近代美術館館長から引き抜かれたポンテュス・フルテン。彼の素敵な言葉を紹介しておく。
美術館は生命を燃焼させるところだ。
そこは生き生きとした空間であり、墓場のモニュマンとしてはならない。
美術館は近代都市において、最後にたどりつく人間的な場所であり、
そこは同時に視覚的に大きく凝縮したところである。
私たちは68年5月革命の本質的な状況、すなわち(街路の状況)のような、 そこにすべての人々が、
階級や文化や教養 の差を越えて、誰一人拒否されたと感じる必要なくいられる空間を作ることが出来ないかと思っていた。
1968年、突如として発生した 「5月革命」は、大学生たちの反抗、反乱の型になって表われた。5月10日、パリの学生街カルチェ・ラタンの道路上には、バリケードが築かれて、警官と学生、労働者との間で、乱闘がくりかえされた。ドーゴール体制に対する異議申し立てであったが、この事件が日大全共闘の学園紛争に繋がり、世界的に学生たちの抵抗運動に発展していった。しかし考えてみれば、当時の首相がポンピドゥーであって、事態収拾に苦労した当事者である、彼の名を冠したセンターが、あの時のコミューンを再現するというのだから、面白い。

 

ポンピドゥー・センター物語

また岡部あおみさんの「ポンピドゥー・センター物語」は興奮し愛読しました。フルテンの言葉を受けた岡部さんを含む学芸員たちが、理想に燃えながら開館へと向かっていく、やけどしそうに熱い物語です。
さて、このFruits de la Passionに熱を与え、躍動させ、若い人や子ども達が訪れ、新しいアートに触れる大切な場として活かしていくのは私たちの出番です。
ポンピドゥー・センター理事長 アラン・セパン氏 ご挨拶から
今回の展示にあたっては、今日のアートシーンにおける作品群を、戦後美術の巨匠たちと対話させるという構成をとり   ました。このように興味深い筋書きが与えられたことで、本コレクションが現代美術の新たな世界的視座の中に位置づ   けられ、その普遍的な意味が浮かびあがりました。日本での開催は、明らかに事件と呼びうる出来事です。その「対話」も「事件」も読み取るのは私たちです。ともかく行ってみましょう。それと、このコレクションがポンピドゥー・センター独特のやりかたで蒐集されていることも知っておいたほうがいいですね。
*「ポンピドゥ―・センター・コレクション  フルーツ・オブ・パッション」展
兵庫県立美術館にて開催中 3月23日(日)まで

 

川西英 生誕120年

川西英(1894-1965)の生誕120年を記念した展覧会がデュオこうべ(3月6日―11日)とKIITO(デザイン・クリエイティブセンター神戸:3月14日―23日)神戸市広報課の主催で開催されます。今回の展覧会は川西さんのDesign Worksに焦点を当てた展覧会で、デザイン都市と標榜する神戸の原点を考える意味でもKIITOで開催し、カタログを刊行することの意義は大きいと思います。私も文を寄せることになり、クリエイティブ・デザインについて考えています。2008年に刊行された「画集・神戸百景―川西英が愛した風景」(シーズ・プランニング刊)にも「神戸百景の時代と縁(えにし)」を書かせていただきました。川西さんの時代と現在の神戸を比較しながら書いてみたいと思います。詳細は同封のチラシをご覧下さい。
カタログは会場でもギャラリー島田でも販売されます。是非こちらもご覧下さい。

 

加川広重巨大絵画その後

1月17日にプロジェクトを無事終了しました。しかし、それから10日間ほどは、毎日、このプロジェクトが夢に出てきて困りました。それは思い出しているのではなく、別の企画が行なわれていて、目覚める前に「おかしいな、終わっているのに」と冷静に分かっているのです。今はようやく導眠剤なしに眠れるようになりましたが。関ったメンバーを中心に「加川広重巨大絵画プロジェクトの読み解き」というサロンを開催します。 詳細は次頁をご覧ください。
「南三陸の黄金」は3月5日(水)には竹下景子さんの「かたりつぎ――朗読と音楽の夕べ」(東北大学川内萩ホール)での舞台背景として、3月11日には東京での震災関連の催しに飾られ、2015年には仙台で開催される国連防災世界会議―3月14日(土)~18日(水)にて、新作「福島」も交えての震災三部作同時展示の可能性も見えてきました。NYの国連ではありませんが被災地から世界への発信は、素晴らしいことだと思います。
さらにはギャラリー島田で個展をされた山田晃稔・迪子夫妻はKIITOでの展示をパリのギャラリー・ボン・プチ・ディアブルのご夫妻とご覧になられ、フランスでの展示の可能性について積極的に働きかけて下さっています。もはや私の手に負える規模ではありません。