CHAIN OF ART

昨日、ようやく「CHAIN OF ART」を終えた。3月11日に端を発し、ここへ至るすべてのことは、私に起因することであり、傍観者たりえない。そのことがずっと背中の重い荷物として感じている。
呼びかけに応じて多くの皆さんの協力をいただき、約200点の作品、170万円を販売した。会期中に「アーツエイド東北」の代表世話人の一人である小川直人さんも来られ、現況を聞かせていただいた。準備段階から法人化の入り口まで来ているとのこと。法人化が実現すれば今回の売り上げを含み、200万円を贈ることが出来ると思う。その段階では公益財団法人「神戸文化支援基金」からの東北志縁は600万円(助成を含む)に上ることになる。まったくの市民ベースでの話しで。

ローカル線で

夏休みは断続的でした。以前は海外へ行くことを予定して夏休みを計画してきた。このところは休みを決めて、さあどうしようと予定を埋めていく。前半は普段出来ない仕事と山陰への小さな旅。そして「CHAIN OF ART」が一週間割り込んできて、寸断された夏休みになりました。その間、五日間を東岡崎市の伊津野雄二さんのお宅にお寄りし、東京の孫たちのコンサート(ピアノとバイオリン)と5歳になった英里夏の誕生祝い、
次男の島田陽が出展している東北震災と関連した建築展(六本木)、慶応病院へ知人のお見舞いなどで忙しくしたあと、お盆で込み合う中、東北新幹線で仙台入りし、そのまま仙石線で塩竃へ行き、そこから船で松島へ渡りました。石巻まではまだ不通のため代替バスで「矢本」へ、そこから石巻線で石巻へ入りました。バスで女川まで往復したあと、泊まるところがなく困りました。最後の一人として古い旅館の一部屋。
なんとか気仙沼に入りたいと駅前のタクシーに交渉するけど2万円とのこと、断念して朝早くに石巻線で小牛田へ行き、JR陸羽東線に乗り換えて一関へ。 そこへ向う車中で、通路の向かい側に座った上品な老人が 「どこからこられましたか?」「どこへいかれますか?」と丁寧に聞くのです。「気仙沼へ向います」と答えると 「それは特別な目的をお持ちなんですね」と言われました。

  ぼくが「がんばろう東北」というTシャツを着ていたのと気仙沼は観光コースではないからでしょうか。
各駅で待ち時間を使って町を歩きました。そこから大船渡線で気仙沼に入りました。


行ったことのない気仙沼にどうしても行きたいと思ったのはTVで見た映像の印象もありますが、雑誌「SWITCH」の“世界を変えた三日間”という特集の鮮烈な衝撃がずっと心に巣くっていたからです。その中に気仙沼出身の二人のシンガーソングライターの言葉と詩の純粋さに撃たれたのです。熊谷育美さんと畠山美由紀さんです。

畠山美由紀さんのすばらしい長文の詩「わが美しき故郷よ」に心を奪われました。

畠山さんはインタビューの最後を次の言葉で締めくくっています。
「普段なかなか故郷に対して『愛してる』なんていわないし、しかし、みんなそうだと思うけど、こころの中ではやっぱりそういうことなんです。そこで生まれ育った人にとっては、他に行きたいところなんてきっとないんですよ。私は気仙沼のために、自分がやれることを全部やっていきたいと思います。私にとって故郷はあそこしかないのだから」

気仙沼では食事をする場所を探すのも苦労しましたが、駅から港まで歩き、そこから船で大島に渡りました。泊まるところを探すのも大変でしたが、こうした予定のないひとり旅をしたかったのです。病み付きになりそうです。旅先で話しをしたり、少し触れ合った東北の皆さんは質朴さと上品さを兼ね揃えた人々でした。私は「逝きし世の面影」(渡辺京二)に書かれている江戸時代に日本に来た外国人を驚かせた当事の日本人の姿が、この地にいまだ色濃く残っていることに感銘を受けました。気仙沼から仙台にはバスで戻り、お盆で込み合う列車にこれも際どく席をとって帰神しました。

「絵に生きる 絵を生きる」のこと

この本の構想はずっと頭の中にあったのですが、具体的に5人を選び、全体の構想を固めたのが2009年1月7日でした。家人の闘病の真っ只中でもありました。その2ヶ月ほど前に北野に住居を移し、新しい書斎を得たのも「文士気取り」の背を押したのかもしれません。ようやく、ペンを置くことにしたのは2年半後ということになります。最後はふらふらで、ゴールに倒れこんだような感じで、もう書けないと思いました。  選んだ五人は、ちょっと類がないほど個性的で、その足跡をたどるだけで書き応えがあるのですが、どうしても統一した文体では書けないのです。音楽にたとえれば松村光秀は民族音楽、山内雅夫はバッハ、高野卯港は演歌、武内ヒロクニはロック、石井一男はグレゴリア聖歌でしょうか。  原稿段階で、作家ないし作家夫人に読んでもらうわけですが、反応は微妙なものがあります。生身の人間を書くことの難しさを思い知らされる日々でした。
 この本は、講談社の学芸出版部が出版を検討して下さったのですが、こうした「列伝(オムニバス)」は販売が難しいのと、編集者の移動で先送りになったので、気心の知れた風来舎の伊原さんに御願いしたのです。おかげで満足できる仕上がりになりました。  いまは、一人でも多くの方に読んで頂きたいです。無名の画家を、無名な書き手が、無名な出版社から自費で出すのは「孤島から作品をビンに詰めて海に流すような心境」ですから。

窪島さんありがとう

8月28日 、風月堂サロン講座で窪島誠一郎さんが「神戸に生きた画家たち」の肖像という講演をされました。 窪島さんの話しは最近、円熟味を増してとてもいいのです。そして本題には入るまえに「今朝、信州から出発する前に一冊の本が届いた」といって取り出したのが私の新著だったのでドキドキしました。勿論、私は出席するとも言っていませんし、本は送っただけで一切話をしていないのですが。「とてもいい本です。島田君に電話して今日、少し持ってきたらと言おうと思ったけど、自分の本が売れなくなるからやめた」と笑わせながら、あとがきの一部を読み上げてくれたのです。
窪島さんが話そうとしたことと、私の思いが重なっていたということです。

「絵に生きる 絵を生きる」の作家たちの展覧会

■武内ヒロクニ 9月10日~21日   ギャラリー島田BF1

■高野卯港   9月24日~10月5日 ギャラリー島田BF1

■石井一男   11月5日~16日   ギャラリー島田BF1

■山内雅夫   12月17日~28日   ギャラリー島田BF1

□石井一男展 12月5日-14日 ギャラリー愚怜

以下は 銀座・ギャラリー枝香庵

□松村光秀   10月11日~18日

□高野卯港   11月30日~12月7日

□武内ヒロクニ 2012年2月7日~14日