世の中、捨てたものではない。 ほとんど奇跡だ

この頃、涙もろくなって困ります。それも、嬉し涙です。 人の好意が身にも心にも滲みたり、不遇な作家に思いがけないことが起こって報われたり。ほとんど奇跡だ、世の中、捨てたものではないと感じ入るのです。 知人のご夫妻がギャラリー島田を訪ねてこられました。 私が立ち上げようとしている「神戸文化支援基金」に寄付をして下さるというのです。 それも匿名で2百万円もの。私より若い音楽仲間なのです。 私は、自立した市民が支える神戸の文化を夢見て、様々な試みをしてきました。 15年前には亀井純子さんのご遺族から1千万円をいただき、(公)亀井純子文化基金を設立しました。昨年3月に理事長の亀井健さんが亡くなり、私があとを務めています。 この基金を拡充することを仲間と相談してきましたが、こうした小さな草の根ファンドの存続は法的には厳しい壁があります。 そこで、理想はさておき、新しい基金を準備することにしたのです。それが「神戸文化支援基金」です。ご夫妻は、それに呼応されたものです。ギャラリー島田が30周年記念にこの基金へ寄付したのですが、ご夫妻も同額の寄付を申し出られたのです。(詳しくは下記をご覧下さい)

頂いたのは「お金」だけではない「勇気」や「希望」です

一昨年にも、同額の寄付の申し出があり、企業メセナ協議会を通じて森口ゆたかさんの「アーツ・プロジェクト(病院にアートを)」に寄付させて頂きました。寄付をされた方も、きっと清々しいお気持ちでしょう。こうした基金の助成で多くの芸術活動が実現しました。そして、お金の価値以上に大切な付加価値を生み、毛細血管のように循環していくのです。なかなか出来ることではありません。贅沢をする、投資をする、資産にする、子や孫に残すのが普通です。亀井さんが託したお金は15年後の今もそのまま基金として残り、その倍額近くの助成金は、その他の方から寄せられたものです。 かつては私も行政に文化助成を充実させるよう強く働きかけていたものです。でも、それによる両者の依存関係を目の当たりにして、自立した市民が文化を支える仕組みを作りたいと考えました。それは勇気を与え、希望として繋がり、みんなが少しばかり胸を張ることが出来るのです。

もっと悪者にならなくては

榎忠さんが私に言う。「もっと悪者にならなくては」 「ええ??どうしたら良いの?」と私。 偽善とか格好良過ぎるのは「?」と、それとなく言われたこともあります。でもそういう事とは少し違うようです。 「もっと行政や権力とやりあって・・・」と榎さん。 そういえば人間が丸くなってしまった。針千本(硬骨魚)も、ふぐ提灯にされて飾られてしまっている。いや蝙蝠提灯か。(イラストがあればいいな)

 100キロを超える浪速の唄う巨人・趙博(チョウ・パギ)さんが「夢・葬送」(みずのわ出版)の中で「<怒り>を生きるエネルギーにしてきた。50代になってはじめて、その根本が間違っていなかったか?と自問自答し暗中模索」と書いているのが面白い。趙さんとは、つい先日、永六輔さんたちとご一緒した。趙さんは私より一回り年下である。私は別に転向し、逃亡したわけではなく、闘い方を変えたつもりなのだけど。 同じ本の中で趙さんが「恨<ハン>の声で恨<ハン>を越えたい」と語っているのが頭の中でずっとリフレインしている。私も「違和感」を大切にしながら、諦めることなく「越えたい」と思っているのです。

 「怒りをこめて振り返れ」という、J,オズボーンの旧作を思い起しております。そこから「闘い」に走っても朝はこない。別の「表現」を持ち寄りましょう。 「灯」を持ち寄れば「星」になる。「星」が集まれば「天の河」です。

 湯布院・亀の井別荘、中谷健太郎さんから頂いた手紙にあって、いつも私を励ます言葉です。先日、訪ねてくださり偶々、取材にこられていた作家の後藤正治さんと昼食を共にする機会に恵まれたのですが、なぜ私ごときに親切にして下さるのかと訪ねると「権力に楯突いて連戦連敗の仲間だから」と小さく笑われました。

「星月夜」

 星といえば、ムンク展(兵庫県立美術館で開催中)で「星月夜」と題された作品を見ました。月は見えないのですが冬の星空と遠くの街灯(まちあかり)に寂しさと人恋しさを感じさせ立ち止まって見入ってました。それになんといってもゴッホがアルルで描いた同名の作品は何度もみていますし、ゴッホと同じ場所に立って星月夜を見上げたたこともあります。多くの友人達 両親 死者などを星月になぞらえて懐かしむのは人々に共通する心理なのですね。「星を見ているとわけもなく夢想するのだ。なぜ蒼穹に光り輝くあの点が、フランスの地図の黒い点よりも近づきにくいのだろうか」「汽車にのってタラスコンやルーアンに行けるなら、死に乗ってどこかの星に行けるはずだ」「ぜったい確実なことは、死んでしまえば汽車に乗れないのと同様に生きている限りは、星に行けないということだ」これは、ゴッホがアルルからテオに宛てた手紙の一節です。

今の日本は目を覆い、耳を塞ぎたくなるような惨状を呈しています。 心はどんどん世間から離れていこうとします。でも世の中捨てたものではないと思えることも身近に、密かに、しかも頻繁に起こっていることが私を励ますのです。 まわりを見回せば、真摯に生きる「星」たちが砂漠のごとき世間に「灯」を点しています。それらはいずれ壮大な「天の河」になるのです。

(公)亀井純子文化基金と神戸文化支援基金から

 さる3月6日、2008年度の助成審査会を持ちました。7名の委員全員と事務局の住友信託から2名。申請は15件と過去最多でした。和やかにしかし真剣に討論し7件、100万円の助成案件を選びました。今月中に手続きをして(公)亀井純子文化基金のHPに公開いたします。この日、アート・サポートセンター神戸に寄せられた寄付\158,000 を中島淳事務局長へ渡しました。 今回、寄せられた寄付を加えて神戸文化支援基金の残高は429万円です。これを今年中に5百万円とし、来年度から10万円/件を5件、50万円助成を始めます。合わせて150万円と助成規模を広げる予定です。

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