その夢も次々と膨らんでいくから うれしくもあり 怖くもある。その夢といっても金持ちになりたいとか、地位を得たいとか、でっかいことをやりたいとかとうこととは無縁の身のほどを知った、慎ましいもので誇るほどのものではありません。誰でも出来ることなのに誰もやっていないこと、と言えばいいでしょうか。前号で加川さんが書いていましたが、誰でもあの巨大絵画を他所で展示したらと言う、でも誰も出来なかった。いや、出来ないことはない、壁さえあれば。でも、そのことにきちっとした意味を与えることは簡単ではないでしょう。私のやっていることは概ね「出来るかもしれない」という妄想が、勝手に膨らみ、徐々に姿を現し、実りを得るという類(たぐい)のこと。こつこつと努力を重ねていく他はないのです。ギャラリーの歴史も35年目に入りました。その時々の積み重ねが、振り返れば、層をなして磐を築いているのかも知れません。それは自分の「益」を追求するのではなく、作家を尊重し、相手を尊重することを優先し、今よりも明日、片目で「現実」、もう一方で「理想」を見ることを心がけてきたことに縁るのかもしれません。白石一文さんの「砂の上のあなた」の言葉を借りれば「この無慈悲な世界への絶望とそれゆえの『すぐそばの彼方』に希望を託す」という深い問いかけに繋がります。困難に見えることも、こうすれば「出来るかもしれない」という道筋がはっきり見えることが多くなってきます。しかし、古稀を迎えると、ひしひしと時間が有限であることを肌で感じます。スタッフは、私を楽にさせてくれる(そして自分たちも楽になる)体制を作ってくれているのに、いっこうに楽になれないのは、「出来るかもしれない」という道筋が見えてしまうからかもしれません。目を瞑(つむ)る時は彼岸行きなのかもしれません。
ながくやっていると

西村功先生のこと

3箇所、同時開催ではじまります。没後10年の記念展をBBプラザ美術館の坂上義太郎さんに相談したことから進展し、神戸ゆかりの美術館との連携となりました。BBプラザ美術館が「パリの情景」を、神戸ゆかりの美術館が「西村功と神戸 哀歓とユーモア」をギャラリー島田が「油彩、水彩画、デッサン」を。神戸市所蔵作品、㈱シスメックス、DAIMARU,ギャラリー島田のコレクションなどを集めての、かってない試みが実現するのです。1989年に初めて展覧会をさせていただき、画集、デッサン集、冊子などの制作、西宮大谷記念美術館での西村功展の実現、それを契機とした「シスメックス西村功コレクション」の実現とずっと繋がってきて、今回の「3箇所、同時開催」の実現があります。こうしたことは、何より西村功という画家の作品と、みなに愛された人柄の魅力であり、またその作品を次代に継承してゆくと多数作品収蔵して下さったシスメックスさんの英断が生かされることでもあり、様々な新しい意味が与えられることになりました。関係の皆様に心からの感謝を捧げます。シスメックスさんからお借りする3ヶ月の間、すべて無償のことですが、代わりの作品を用意し、展示変えをせねばなりません。でも神戸が西村先生に彩れ、憩う姿を見るのは心踊ることです。

松村光秀先生のこと

全国7ヶ所での「偲ぶ展」の6ヶ所が、佐喜眞美術館で5月6日をもって終わりました。地元2紙に窪島誠一郎さんと私が「展評」を書かせていただき、普段はあまり来ない、沖縄のみなさんが来館されたとお礼の電話がありました。(同封の資料をご覧下さい)
27年に及ぶお付き合いになりました。信濃デッサン館槐多庵での展覧会とあわせて、あらためて、その素晴らしい作品群に見入り、心に染み入りました。今年はあと「神戸わたくし美術館」を残すのみとなりました。この旅もまた始まったところです。

伊津野雄二作品集のこと

ギャラリー椿、名古屋画廊、ギャラリー島田と新潟絵屋が共同で作品集の出版を準備しています。伊津野さんとのお付き合いは、うちが一番新しい(2009年)のですが、出版は、島田が呼びかけさせていただきました。出版記念展は、11月の椿さんを最初に、上記の順番で、島田は2014年5月になります。いいものが出来ることを確信しています。新潟絵屋の大倉宏さんが、「理想の種」という、力の籠った紹介文を書かれ、私もエッセイ「大切なものはここに」を書いていますが、2000字を書くのにとてつもなく時間がかかりました。伊津野さん自身が、美しい作品写真と詩句をちりばめてデザインされ、それに私の文を重ねるのは、うれしくもあり苦しくもありました。こんなに推敲を重ねるのも珍しいことでした。こうした共同作業は、それぞれの想いを譲り合いながら進めていかねばなりません。この発案から刊行までも、また創造的表現なのだと思います。刊行は10月中旬。芸術新聞社からです。皆様には刊行に先がけてご覧いただきます。

再び「出来るかもしれない」

  • 藤崎孝敏さんの展覧会を来年も三つのギャラリーで開催します。それまでにHPを作り、来年末までに画集を刊行したいと思い、  準備を進めています。
  • 私の5冊目の著作を古稀の間に出す準備を進めています。風来舎、井原さんと組みます。
  • 加川広重巨大絵画プロジェクトは第2作の「陸前高田」と「雪に包まれる被災地」を同時にご覧いただく計画があります。沖縄、  広島でも出来ればいいですね。
  • 終わったばかりの「坂本正直展」は、今日な大切な意味があります。例年は坂本さんの生誕100年でもあります。これも沖縄、   広島で…。香月泰男がシベリアシリーズを描いたのが復員後、22年。58歳の時。坂本さんが「クリークの月」を描いたのも58  歳の時でした。それだけの時間が普遍としての表現にいたるための思索の深化に必要であったということだと思います。2011年  に97才まで、まったく、ぶれることなく追求してこられた世界は戦争と云う事象を超えて美しいのです。